耳ヨリくじら情報

2020.12.02

『全国鯨フォーラム 2020 in 下関』開催! クジラと地域産業を考えるフォーラムで飲食店や加工業者、一般消費者が意見を披露

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11月26日、母船式沖合商業捕鯨拠点である下関市で『全国鯨フォーラム2020 in 下関』が開催されました。

宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘がおこなわれた地として有名な巌流島がある街ということで、フォーラム冒頭には、地元ボランティアが武蔵と小次郎に扮して寸劇を披露。迫力の決闘シーンに会場からは拍手が起こりました。

下関市長が「クジラを起点に活力あるまちづくりをすすめたい」と表明

▲ 下関市長 前田晋太郎さん

その後、開会あいさつに登壇したのは下関市長の前田晋太郎さん。「近代捕鯨発祥の地である下関市は、捕鯨の拠点として栄えてきたが、1988年の商業捕鯨モラトリアム以降、クジラ産業は衰退していた。昨年7月には悲願の商業捕鯨再開となったので、今後はクジラを起点に活力あるまちづくりをすすめていきたい」と意気込みを表明しました。

クジラ産業の未来像のひとつとしては、「地方特産品」という位置づけも考えられる

▲ 東京海洋大学教授 森下丈二さん

続く、第1部の基調講演で登壇したのは、東京海洋大学教授の森下丈二さん。『商業捕鯨再開1年―クジラ産業の未来を考える』をテーマに、「資源と捕獲頭数」「市場と流通」の現状を説明して、「クジラ産業の未来像」の可能性を示しました 。

「資源と捕獲頭数」に関しては、クジラ以外のすべての水産物には資源として限りがあることを示唆したうえで、「近年は水産物の資源が減っていることが話題となるが、クジラがそうした状況に陥らないよう、しっかりと守っていかないといけない」とコメント。「市場と流通」に関しては、「西日本ではクジラの部位は多様性に富んでいるが、北の方は流通している品目が少ない」「在庫があるのに、食べたいのに手に入らなくて食べられない人も多い」といった現状を明かしました。

また、「クジラ産業の未来像」としては、「国民食として、ひとりぶんが少量であっても広くみんなに食べてもらう方向性もあれば、地域の特産としてのありかたを模索する方向もある」と持論を展開。「地方特産品としての位置づけを追究すれば、鯨肉の扱いに長けた人がしっかりと伝統と文化を守っていくという利点もある」と説明しました。

「わたしにとってクジラとは?」に「Fun!」「ライバル」などユニークな回答が!

続く第2部では、クジラへの熱い思いを携えた5人のパネリストによるパネルディスカッションを開催。鯨肉生産者である共同船舶の高野雄介さん、鯨肉加工業者『株式会社東冷』専務取締役の石川真平さん、クジラ料理専門店『下関くじら館』店長の小島純子さん、下関で割烹旅館『寿美礼』代表取締役の和田健資さん、そして消費者代表として、下関市立大学に通う学生の前川直輝さんが登壇しました。

コーディネーターを務めた、下関市文化振興課下関くじら文化振興室長の岸本充弘さんからまず挙がった質問は、「わたしにとってクジラとは?」。これに対して高野氏は「Fun!」と回答。「クジラに関しては難しい問題が勃発することも多く、そのたびに苦境に立たされるのが現実だけど、だからこそ開き直りの意味も込めて、そのときどきでベストを尽くすことを楽しんでいきたい」とその理由を説明しました。

「素晴らしいライバル」と回答した石川さんは、「今日と明日で商材が全然違う。どういうふうに加工するのが最適か考えることで、日々勉強させてもらっている」と想いを述べました。

続く小島さんは、「故郷の誇り/日本・世界の宝/食のセーフティネット」と回答。世界の食糧事情の観点からも、クジラの食文化を守り続けていくことは大切だと訴えました。また、和田さんは、古くから下関の観光資源であったクジラに対して「温故知新」の想いを抱いていると回答し、大学進学を機に下関に移り住んだことでクジラを食べるようになった前川さんは、「海の珍味」と回答。「珍味だからこそ、食べたいと思っている人は多いと思う。赤身肉を食べて鯨肉を好きになる人だけでなく、いろんな部位をきっかけにクジラファンになる人が増えたらいい」と理由を説明しました。

一般消費者のクジラに対する誤った認識、ネガティブな思い込みを払拭すべく、価値ある商品づくりやストーリーづくりに尽力したい

続いての質問は「商業捕鯨停止から調査捕鯨へ 対応するための取り組みは?」

これに対する高野さんの回答は「開かれたPR政策」。「調査捕鯨時代はPRをあまり前面に出せなかったが、これからは開かれたPR政策を打ち出していくことが重要」と話しました。石川さんは、「くじらの維新!プロジェクト」とオリジナリティあふれる回答を披露して、常にクジラの新たな価値ある商品づくりに挑んでいることを明かしました。

また、小島さんは「クジラ関連情報の発信」。「“商業捕鯨停止”というワードは、クジラを獲ること自体が悪だという刷り込みを国内外の人に対して植え付ける結果となったと思う。捕鯨に関する正しい知識を伝えていくことが大切」と語りました。さらに和田さんは、料理や知識でクジラの「過去と未来」を伝えていきたいと話しました。

続いての質問は、「31年ぶりの商業捕鯨再開 調査捕鯨のときと何がどう変わったと思うか?」。これに対して高野さんは前問への回答同様、「PR売り場の拡充から露出度を高めていくことが必要になった」と話し、石川さんは、「ミンクを獲れなくなった今、ニタリの特性を活かした商品作りが大切」と考えを明かしました。

さらに小島さんは、「商業捕鯨が再開したからといって捕鯨問題は解決していない」と話し、『下関くじら館』のお客の中にも「南氷洋でも自由に獲り放題になったんでしょう」「これからどんどん価格が安くなるのね!」と勘違いしている人が多い現状を明かしてくれました。

また、観光業に従事する和田さんは、「(長州藩出身の)吉田松陰が投獄された際、門下生たちが松陰の衰弱を防ぐために栄養価の高い鯨肉を差し入れたという話もあるんです。そういうストーリーを通して、歴史好きの人にも興味を持ってもらえると思う」と持論を展開。前川さんは、「消費者として、商業捕鯨再開による変化は実感できないが、今後、鯨食が日常化されればいいなと思う」と想いを語りました

最後の質問は、「“くじらの街”の将来についての道筋は?」。これに対して前川さんは、「価格と品質が両立できて、日常的に鯨肉が手に入る状態になれば、食文化として定着すると思う」、和田さんは、「下関には既に鯨食文化を継承する土台があるので、未来に向かってもこのままこの道を究めていきたい」と語りました。

クジラを使ったスイーツまで! フォーラム後にはさまざまなクジラ料理が登場

▲ インド風鯨フライのミントソース添え
▲ hanaoba(鯨の尾羽)のミルフィーユチョコレートムース添え

プログラム終了後には、会場を移して、さまざまなクジラ料理を食べられる試食会を開催。地元の飲食店の協力のもと、バラエティ豊かな料理がお目見えしました。『インド料理ミラマハル』による「インド風鯨フライのミントソース添え」(写真上左)、フランス料理店『Maison de basara(メゾン ド バサラ)』による「hanaoba(鯨の尾羽)のミルフィーユチョコレートムース添え」(写真上右)などの珍しいメニューも豊富で、どのブースもかなりの賑わい。会場は終始、おいしい笑顔で溢れかえっていました。

▲クジラ鍋

また、終盤にはアツアツ出来立てのクジラ鍋が振る舞われ、参加者はみんな身体の芯からホカホカに。あたたかな雰囲気いっぱいの中、フォーラムは幕を閉じました。

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