「クジラについても栄養についても、知らなかったことを知るのはすごく楽しい」トライアスロン元オリンピック日本代表山本良介さんinterview | 聞く | くじらタウン

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2023.10.11

「クジラについても栄養についても、知らなかったことを知るのはすごく楽しい」トライアスロン元オリンピック日本代表山本良介さんinterview

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現役時代には、オリンピックや世界選手権で日本代表として活躍。引退後も、大会MCを務めるなど、さまざまな形でトライアスロンと関わり続けている山本良介さん。持久力が不可欠な競技との関わりが深いとあっては、ぜひともバレニン豊富なクジラの魅力を知っていただきたいところです。そこで今回、「日本鯨類研究所」の早武真理子さんによるクジラについての解説をお聴きいただき、さらに、昭和25年創業の老舗『元祖くじら屋』(東京・渋谷)の料理を召し上がっていただきます。

小学生のころは、給食にクジラが出る日が楽しみだった

早武「山本さんはクジラ料理を召し上がったことはありますか?」

山本「小学校時代、給食に竜田揚げが出ていたんですけど、給食のメニューのなかの好物のひとつでした。1ヶ月のメニューを見ながら、“これがある日とこれがある日は楽しみだな”とワクワクしていましたが、その中のひとつがクジラの竜田揚げです。給食以外でも、外食で刺身を食べたこともあります」

早武「どっちも赤肉ですね。クジラの赤肉は、低カロリー、低脂肪、高タンパクでとてもヘルシーなんですよ。家畜の赤肉は肉と脂肪のバランスがいいですが、クジラは飼育できないので完全に天然で、赤肉は赤肉、脂肪は脂肪など分かれていて、部位ごとに食感も栄養も異なります。それと、赤肉のなかに含まれているバレニンは、抗疲労効果が高いことでよく知られています」

山本「バレニンの抗疲労効果がすごいとは聞いたことがあります。でも、サプリメントで見たことがなかったし、鯨肉料理はどこでも食べられるというわけではないので、今まで積極的に摂取できずにいました」

アジアカップ高松

鉄分豊富なクジラの赤肉はアスリートにもってこい

早武「トライアスロンという競技はやはりかなり持久力が必要ですよね?」

山本「そうですね。トレーニング量も他の競技に比べて多いので、現役のときにバレニンを摂取できていたらよかったかもしれません」

早武「食事に関してはどんなことに気を付けていたんですか?」

山本「いかに次の日に疲れを残さないかが大事なんで、食事の内容だけじゃなくタイミングにも気を付けていました。僕の場合、多いときで1日10時間くらい練習していたので、スタミナ維持のために1日7,000kcal~8,000kcal摂取していたんですけど、1回の食事で一気に食べると消化が追い付かなくなるので、合間合間でこまめに補食をとるなどしていました。それでも補えないぶんはサプリメントやプロテインで摂取していましたが、選手のなかには、食事に気を付けていても鉄分が少なくなって貧血になりがちな人もいました」

早武「クジラの赤肉は鉄分もとても豊富なので、鉄分不足に悩んでいる方にはぜひ摂取していただきたいです。千葉県の南房総市で捕られているツチクジラなんかは特に鉄分が豊富なんですよ」

クジラが積極的に食べられているエリアも、イルカ漁の時期も初めて知った

山本「千葉以外では、クジラがよく食べられている地域はどのへんですか?」

早武「2019年に商業捕鯨を再開してからは、鯨食文化をもっと普及させていこうという動きがあるのですが、現状は長崎や関西が根強いです」

山本「太地町がクジラと縁が深いという話は聞いたことがあります」

早武「お詳しいですね! 太地町では現在でもクジラやイルカを対象とした捕鯨はおこなわれています。まさに今月、9月1日に今年のイルカ漁が解禁になったばかりです。現地を訪れると、道の駅や街中の食事処で、イルカのお刺身や鯨の竜田揚げをいただくことができますよ」

山本「今が漁の季節とは初めて知りました。クジラやイルカについては、なんとなく知識として知っていることもあるけど、まだまだ知らないことがたくさんあるので興味深いです」

早武「クジラに関しては、ヒゲや歯、骨も工芸品の材料にしたり、植物を育てるためのカルシウム剤として使われていますし、捨てるところがまったくないのも大きな特長なんですよ」

山本「これまでは、“癒しの動物”というぼんやりとしたイメージでしたけど、知れば知るほどおもしろそうですね!」

日本選手権

海で泳ぐことはあってもクジラを目撃できることはないから、いつかホエールウォッチングしてみたい

早武「トライアスロンの種目のひとつにスイムもありますし、山本さんにとっては身近に感じられる動物ですか?」

山本「シドニーでの大会時には、サメ防止のためにネットを張られていたことがあったそうですが、僕自身はクジラが生息しているエリアでは泳いだことがないし、実物を見たこともないですけど、ホエールウォッチングの機会があればいいなあとは思っています」

早武「泳ぐことは昔からお好きだったんですか?」

山本「幼少のころに水泳をはじめて、小中では競泳の選手でした。ジュニアオリンピックにも出たことがあったし、当時の夢はもちろんオリンピックでメダルを獲ることでした。でも、高校生になるころにはその夢の実現がどれくらい難しいかがわかってきたんです。そこでコーチに相談したところ、トライアスロンにチャレンジすることをすすめてくれました。1997年のことです。その後、2000年のシドニーオリンピックで、トライアスロンが初めてオリンピック競技として採用されているので、ちょうど日本でもトライアスロンが盛り上がってきたタイミングでした」

早武「その後、さまざまな大会で成績を残されていますが、現在はトライアスロンとはどのように関わっていらっしゃるのでしょうか?」

山本「現在は大会にゲストランナーとして出場させていただいたり、ゲストMCとして呼んでいただいたりですが、平日は会社員として働いているので、食べる量や食事の内容も変わってきました。特に気を付けているのは肌にいい栄養素を摂ることです。現役時代に強い日差しを浴び続けたので、シミを防ぐことを重視できたらと思っています」

――ここでクジラ料理を召し上がっていただきますが、肌ケアに興味がおありとのことで、今日はぜひ、良質なタンパク質やコラーゲンも多く含有しているクジラを楽しんでいってほしいです。今回のメニューは、”元祖くじら屋”(東京。渋谷)さんのチーズカツ、鯨肉みそステーキ、鯨ベーコンの3品です。

チーズカツ

山本「うれしいです。揚げ物は現役のときは控えていたけど、本当は大好きで今ではよく食べるんですよ。チーズカツもすごくおいしい! 魚と肉両方のいいとこどりという感じですね」

早武「哺乳類なのに刺身で食べられるので魚のようでもあり、肉でもありますよね」

山本「まったくクセもないしすごく食べやすいです。僕、普段は焼酎を飲むことが多いんですけど、このメニューは日本酒も合いそうですね。焼酎はもちろん、絶対合うと思うし」

鯨肉みそステーキ

山本「味噌ステーキはすごく独特な色味ですね」

早武「見た目が赤黒いぶん、鉄分が豊富だと思うと頼もしく感じられますよね」

山本「栄養面は本当に魅力的です。食感はささみを硬くしたような感じですね。味噌がしっかり沁み込んでて噛むほどに口のなかにうまみが広がるから、これはお酒が進んじゃいますね。お酒じゃなくてごはんと合わせるんだったら、白飯のうえにワンバンさせて食べたいです。絶対ごはんも進む!」

鯨ベーコン

山本「ベーコンは、どの部位で作られているんですか?」

早武「ウネスです。アゴの下のしましまの部分を縦切りにしています。皮の部分と油の部分を一緒に食べられます」

山本「これは絶対、肌にいいですね! 肉の脂身みたいにギトギトしていないし、あっさりしていて食べやすいです。これでコラーゲンが摂取できるならこんないいことはないです」

クジラの内臓にも興味津々

早武「ちなみにどのメニューが一番お好きです?」

山本「チーズカツかな。でも、どれも捨てがたいです。これまで竜田揚げと刺身くらいしか食べたことがなかったから、こんなにいろんな料理があることにびっくりしました。僕は現役時代から、“知らなかったことを知る”ことをとても大事にしているので、料理について、栄養について知ることができたのもうれしいし、クジラについても興味を持つことができたので、これからは、たとえば海に行ったときにも“クジラいないかな?”って探す楽しみも増えました」

早武「クジラにも興味を持っていただけてうれしいです」

山本「現役時代は、“いかにして強くなるか”ばかり考えていましたが、これからは一労働者として健康を保っていくことも大切ですし、そのための役に立つ知識は積極的に仕入れていきたいです。反対に、たとえばこれからトライアスロンを始めたいと思っている人だとかに対して、自分が役に立てることがあれば還元していきたいし、近々も九州の大会にMCとして呼んでいただいているので今から楽しみにしています」

早武「九州ではクジラの内臓もメニューとしてよく食べられているので、ぜひ食べてきてほしいです」

山本「すごく興味深い!クジラとの出逢いをきっかけに人生がより豊かになってきた気がしますし、クジラに限らず、いろんなことに興味を持つことで可能性って広がっていくと思っているので、今後も新しいことにはどんどんチャレンジしていきたいです!」

▼山本良介さん
山本 良介(やまもと りょうすけ)
1979年5月17日生まれ。京都府京都市出身。
元トライアスロン選手
小学生から水泳を始め、ジュニアオリンピックに出場。水泳コーチの勧めで18歳の時にトライアスロンデビュー。2008年の北京オリンピックでは日本代表を務める。ITUコンチネンタルカップ(現在のアジアカップ)では優勝5回の経験を持つ。 現在は会社員をしながら、大会MCやゲストランナーとして活躍中。

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