「クジラについて知りたい人に利用し続けてもらえる資料館にしたい」日本最高峰のクジラコレクター『勇魚文庫』細田徹さんinterview前編 | 聞く | くじらタウン

聞く

2022.03.02

「クジラについて知りたい人に利用し続けてもらえる資料館にしたい」日本最高峰のクジラコレクター『勇魚文庫』細田徹さんinterview前編

Share :

日本最高峰のクジラコレクターである細田徹さんのコレクションの一部が千葉県南房総市の道の駅『和田浦WA・O!』に隣接する『和田地域センター』内の資料館に展示されています。館内は1階と2階に分かれ、1階は一般公開されています。昭和・大正の時代に作られた玩具や捕鯨道具など、クジラ関連の幅広いアイテムが展示されているスペースは、見ているだけで気分が上がります。クジラについての幅広い知識を吸収したいなら、ぜひ訪れてほしい場所です。

クジラには生き物としての迫力や表情、食べ物としての栄養やおいしさなど、語り尽くせないほどの魅力があります。しかも、なかなか目の当たりにできる存在ではないので、生態についてはまだまだ知られていないこともたくさん。それゆえに、知れば知るほど知的好奇心がかき立てられ、虜になっていく人も多いでしょう。細田徹さんもそのひとり。クジラに魅了されたその日から、コツコツと集め続けたコレクショングッズは数え切れないほどです。では、細田さんがクジラに心奪われた理由とは? そして、『勇魚文庫・鯨資料館』開設の経緯とは? ご本人にお話を伺いました。

日本の文化としての捕鯨に関わっている人たちの想いも知りたい

――細田さんがクジラ関連のアイテムをコレクションするようになったきっかけを教えてください。

「きっかけはクジラを目の前で見たことです。今から50年くらい前ですね。1968(昭和43)年6月にアメリカから日本に小笠原諸島が返還されたんですけど、僕はそのころ釣りに夢中で、翌年の正月には八丈島で漁船をチャーターして1週間くらい小笠原に釣りに出たんです。そこで2頭のザトウクジラを目の当たりにしたんですけど、あまりのでかさと速さに衝撃を受けました。それまではクジラといえば、給食で食べたり、南氷洋捕鯨を描いたニュース映画で観たりしたくらい。それ以上の知識はなかったので、東京に戻るや本を買ってクジラについて調べました。しかも、一冊じゃ飽き足らず何冊も何冊も。ちなみに、最初のうちは本だけ集めていたことから、コレクションを『勇魚文庫』と名付けました。書店に並ぶものをすべて集め終えたら、次は江戸時代に出版されていた和本を古本屋で探したり、新刊が出たらチェックしたり。東京ドームの近くに住んでいるので、神保町や本郷、早稲田の古本屋街には近いので、毎週末に訪れていました。ほぼ毎週開催されている古書展や古本市には開店前から並ぶんですけど、いつも100mくらいの行列ができていましたね。そのころはグッズなんてぬいぐるみくらいしかなかったんですが、あるとき新宿伊勢丹で(捕鯨と関わりの深い)イヌイットの工芸品の展示即売会が開催されたことがあって、そのあたりからグッズもボチボチ集め始めるようになりました」

――これまでに集めたものの点数はどのくらいですか?

「ざっと一万点ですが、細かいのも数えたらもっとありますね。本は50年、グッズは35年くらいかけて集めていますから。骨董市、オークション、個人の紹介で気になるものを入手するほかには、外国の方と交換しあうこともありました。本やグッズの交換はよくやりましたね。ドイツ、フランス、イギリス、スイス、アメリカと相手の国はさまざまです。特にアメリカではすごく人気なんですよ。ニューベッドフォードの捕鯨博物館の夏休みの来館者数はすごいですから。コレクターも多く、たとえばケネディ元大統領はスクリームショー(クジラの歯や骨を彫ったアート作品)のコレクターとして知られています」

――未来に残したいクジラ関連のものは、どんなものでも集められているそうですね。

「クジラ関係のチラシやレストランの箸入れなどはスクラップブックやファイルにまとめているんですけど、それも楽しみながらやっています。現時点で30冊くらいありますよ。そのへんに置いとくとなくなっちゃう可能性があるから、一か所にまとめておいたほうがいいでしょ? 個人でひっそり持っている人のものは世の中の人が楽しむことはできないけど、ここにまとめておけば、未来も含め、誰かに利用してもらえるだろうと思っています」

クジラに関して知りたいことだらけ。胃の中にはどんなものが入っているんだろう?

―― 1階の展示スペースには見た目に愛らしい玩具や蒲鉾板絵など、誰もが興味をひかれそうなものもたくさんありますね。

「道の駅に隣接していることもあって家族連れで来館する方も多いので、1階には、子どもにも興味を持ってもらえそうなものも飾っています。もちろん展示の入れ替えもありますよ。コレクションってストップすると“古いもの”になる一方ですから、新しいものはどんどん取り入れていかないとと思っています」

▶細田徹さんのinterview後編
「クジラに対する考え方が人それぞれだけど、どんな考え方であれクジラに興味を持ってくれたらうれしい」南房総市『鯨資料館・勇魚文庫』細田徹さんinterview後編

■細田徹さん

日本最高峰のクジラコレクターである。コレクションの一部を千葉県南房総市の道の駅『和田浦WA・O!』に隣接する『和田地域センター』内の資料館に展示中。

▶関連記事 

 千葉県南房総の道の駅「和田浦 WA・O!」は、クジラを愛で、学び、味わえる!


Share :