「クジラについてよく知ることで、感謝の気持ちを持って食せると思う」元モーグル日本代表、オリンピアン 伊藤みきさんinterview | 聞く | くじらタウン

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2021.08.04

「クジラについてよく知ることで、感謝の気持ちを持って食せると思う」元モーグル日本代表、オリンピアン 伊藤みきさんinterview

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クジラの栄養価の高さは、身体が資本であるアスリートにとっては大きなメリットであるはず。これまでクジラを食べたことがない選手でも、「おいしくて栄養豊富」と知ったら、クジラファンになってくれるのでは?そんな思いからスタートしたアスリートインタビューに出演してくれる2人目は、元フリースタイルスキーモーグル日本代表、オリンピアンの伊藤みきさんです。2021年3月には第一子となる女の子を出産したばかり。今後は食育についても考える機会が増えるであろう伊藤さんに、宮城県石巻市の『木の屋石巻水産』のクジラ加工品を食してもらいました。

日本の文化としての捕鯨に関わっている人たちの想いも知りたい

――伊藤さんはこれまで、クジラに対してどんなイメージを抱いていましたか?

伊藤「日本の文化として捕鯨があることは知っていたけど、これまでクジラを食べたことはなかったので、どんな味なんだろう? と興味を抱いていました。捕鯨に関してはいろんな意見があると思いますが、日本の文化として存在するということは、そこに関わる人、様々な思いを持って取り組んでいる人がいるということだから、それについても知りたいです」

良質な脂、良質な赤身肉たっぷりのクジラ肉はアスリートにうってつけ

――クジラを食べてみたいと思いましたか?

伊藤「今回、興味を持って調べたところ、良質な脂と赤身肉が摂れる食材だとわかったので、より興味が強くなりました。良質な脂、良質な赤身肉はアスリートにとっては一番必要な栄養素ですし、実際、わたしも競技生活を送っていたころから意識して摂取していました。良質な脂に関してはMCTオイルを摂取していましたが、摂取を続けることで筋力も持続力も上がるというデータ通りの効果を実感していたので、遠征中もいつも持ち運ぶようにしていました。その味に慣れていたせいもあって、古い油を使った料理が出るとニオイからして苦手だと感じるし、身体の酸化につながることもイヤでした。タンパク質の含有量が高い赤身肉は身体づくりに必須ですが、クジラの赤身肉なら、鉄分も多いから効率よく栄養を摂取できるのも魅力です。練習で疲れ切っているときなんかも、クジラ肉を食べれば、次の練習に向けて手っ取り早く必要な栄養を補給できそうです」

クジラに関して知りたいことだらけ。胃の中にはどんなものが入っているんだろう?

――栄養素を知っただけでも、「身体づくりのためにもぜひ食べたい!」と思われたのですね!

伊藤「そうなんです。でも、料理の仕方はわからないし、どの部位が食べられるのかもわからない。そもそも、あんなに大きな生き物が、どうやって加工され、わたしたちの食卓まできているのかも想像できないです。牛や豚は、食肉加工の工程について教わる機会もあるし、“これはタンだから舌だ”“ハツってことは心臓ね”とどの部位を食べているのかわかりますが、クジラについては、わたしたちはすごく無知ですよね。そういうことを知れば、クジラに対して感謝の気持ちを持って食せるんだろうなあと思います。以前、イカをさばいたら、胃の中からイカが飲み込んだ魚が一尾まるごと出てきたことがあるんですけど、クジラの胃の中も見てみたいです。海の王様として食物連鎖の頂点にいるイメージのクジラが、どれくらい大きなものを食べているのかも気になります」

娘には、「いただきます」の言葉を大事にできる子どもに育ってほしい

――クジラに対して感謝の気持ちを持って食したいというのはステキな考えですね。

伊藤「肉も魚も野菜も命あるものをいただいているので、感謝することは大事にしていますし、娘にも、命に感謝していただくことの大切さはしっかりと伝えていきたいです。おいしい/おいしくないの感覚は誰にでもあるので、いただいたところ口に合わないことがあるのは仕方がないけれど、食材を育てた人や食卓まで届けてくれた人への感謝も込めて、“いただきます”という気持ちを持てる子に育てていきたいねといつも夫と話しています。わたし自身は どういうふうに育てられたかというと、うちはとにかく“残しちゃダメよ”という家庭でしたが、その理由として、“舌は開発されていくから、初めて食べたときおいしくないものも、2回目、3回目食べるうちに好きになるんだよ”と言われていたことを覚えています。確かに、最初苦手だったカマンベールチーズもだんだんおいしさがわかるようになったし、オリンピック教育を学びに行ったシンガポールで初めてドリアンを食べてまずそうな顔をしてしまったときにも同じようなことがありました。一緒に食事していた海外の選手たちが、“みきの1回目の顔はOKだよ! みんなそうだけど、2回目には、まあいけるかな、って顔になって、3回目は、あーこれこれ! っていう顔になるから”と教えてくれたんです」

良質な脂のクジラベーコンなら、おいしいペペロンチーノが作れそう!

――今回、木の屋さんの「石巻 鯨カレー」「くじらベーコン3種セット」をご試食くださったとのことですが、クジラのファーストインパクトはいかがでしたか?

伊藤「すごくおいしかったです!まずカレーは、ココナッツミルクの味がたまらなくて、毎週食べたいと思いました。肉が口の中でホロホロほぐれるくらいやわらかく煮込まれていて、すごく時間をかけて丁寧に調理されたんだろうなあと想像しました。ベーコンセットは、赤身が多いものと脂身が強いものの食べ比べも楽しかったです。わたしは赤身が多いものが好みでしたが、どれもしっかり脂分があるのに食べるとさっぱりしていて、絶対パスタに合うと思いました。わたしパスタが大好きなんで、これでペペロンチーノを作りたいです!良質な脂だからニオイも気にならないし、身体にもいい一皿に仕上がりそうです」

木の屋 「ありがとうございます。赤身と皮のバランスがいいのは『畝須』という部位なんですけど、どちらの食感も楽しめることから、ツウの人には人気のベーコンです。伊藤さんがおっしゃってくださった通り、クジラの脂はとても良質ですし、それ以外にDHAやEPAといった成分も豊富に入っているので、健康な身体づくりにも役立てていただけると思います」

伊藤「わたし実は鶏や牛、豚の脂が苦手なんですけど、クジラの脂は青魚の脂に近いと感じたのでおいしくいただけました。口の中でサラサラになって残らないから、重たくないんですよね。あんなにおいしい肉なら、自宅で自分でも料理したいと思いました」

▲木の屋 石巻鯨カレー
▲木の屋 くじらベーコン

クジラ肉を、身体の調子を整えることに役立てたい

――どんなものを作ってみたいですか?

伊藤「餃子がいいな。赤身と脂身の両方を使って、クジラの餃子を作ってみたいです!」

木の屋「クジラの赤身を挽肉代わりに使った餃子なら居酒屋で見たことがありますけど、脂身も入れるというのは斬新ですね。想像しただけでもジューシーでおいしそうです」

伊藤「送っていただいたブロック肉はどうやって食べたらおいしいですか?」

木の屋「石巻では刺身で食べるのが一般的なんで、ぜひ刺身で食べてみてほしいです。ただ、流水で解凍するとドリップが出て、肉の臭み、えぐみが強くなるので、冷蔵庫で一晩寝かせて解凍させてみてください。クジラをおいしく食べるための、一番大事なポイントです」

伊藤「楽しみです! 今回いただいたカレーは、調理も不要だし、後輩にも送ってあげたいくらい気に入っていますが、自分で料理することにもトライしながら、クジラ肉を、身体の調子を整えることに役立てていきたいです」

木の屋「わたしも今回お話を伺えて参考になることがたくさんありました。高たんぱく、低カロリーでEPA、DHA、抗疲労成分・バレニンが豊富なクジラ肉は、代表的な栄養素だけみてもアスリートのみなさんにはぴったりですが、その他にビタミンAなども豊富に含まれているので、みなさんへの伝え方についても改めて考えながら、アスリートのみなさんのお役に立っていけたらうれしいです」

■伊藤みきさん
指導者を持たず、天性の滑りで数々表彰台に立ち、14歳でナショナルチームに選出。高校生で初出場したトリノ五輪で決勝に進出し、ルーキーオブザイヤーを受賞。ワールドカップ入賞者の常連となる。ソチ五輪前年には念願のワールドカップ初優勝、世界選手権2種目で銀メダルに輝くなどエースに成長。ソチ五輪では日本代表となるも右膝前十字靭帯損傷のため棄権。2019年5月に現役を引退。引退後はスキー界やスポーツ界への貢献のため次のステージへの一歩を踏み出した。

伊藤みきさんブログ

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