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本日9月9日は、五節句の一つである「重陽(ちょうよう)の節句」です。別名「菊の節句」とも呼ばれ、菊酒を飲んだり長寿を願ったりする、古くから大切にされてきた日本の伝統行事です。また、これから迎える「十五夜(中秋の名月)」など、秋は静かに月を眺め、風情を楽しむ季節でもあります。
クジラは古くから、肉や油を私たちの生活に与えてくれるだけでなく、その「ヒゲ」や「歯」、「骨」にいたるまで、日本の優れた職人たちの手によって、数々の美しい「伝統工芸品」へと姿を変えて暮らしを彩ってきました。
今回は重陽の節句に合わせ、一般財団法人「日本鯨類研究所」が所蔵する貴重なコレクションのなかから、秋の夜長にじっくりと眺めたくなる、クジラの美しい装飾品の数々をまとめてご紹介します。
1. 菊水模様の輝き。重陽の節句に寄り添う「笄」

日本の髪飾りの歴史のなかで、もともとは髪をまとめるための太い棒状の道具だった「笄(こうがい)」は、時代の移り変わりとともに華やかな装飾品へと発展していきました 。
所蔵品の一つである、中心から左右に分解できる仕掛けが施された笄には、漆黒の柄の両端に白い鯨歯が使用されており、そこへ美しい「菊水模様(きくすいもよう)」の蒔絵が施されています。まさに「菊の節句」である重陽の日にふさわしい、職人の細やかな意匠が光る一品です。
2. 伝統の玉かんざしと、洋装にもなじむ「クジラのヒゲのかんざし」

明治期に制作されたと考えられる「玉かんざし」は、玉の部分から柄にいたるまでのすべてが鯨の歯で作られています。玉の部分には金蒔絵が美しく施されており、ハレの日の衣装や艶やかな和装を引き立てる品格を備えています。柄の部分を拡大してみると「松林」という文字が刻まれているなど、歴史の歩みを今に伝える貴重な手がかりを残しています。

さらに、コレクションのなかには「クジラのヒゲを使ったかんざし」も所蔵されています。こちらはシンプルで落ち着いたデザインと色味になっており、和装はもちろんのこと、現代の洋装のコーディネートとも合わせやすいのが大きな魅力です。
3. 雄々しい龍の彫刻。経年変化で飴色に輝く明治期の「櫛」

明治期に作られたとされる半月型の「櫛(くし)」には、マッコウクジラの鯨歯が使用されています。
この櫛の大きな特徴は、鯨歯の両面に対して、ウロコの一つひとつまで丁寧に刻まれた雄々しい龍と雲の彫刻です。裏と表でそれぞれデザインが異なっており、当時の職人がかなりの時間を費やして制作したことが想像される、非常に精巧な造りとなっています。長い歳月を経て、経年変化によって美しい飴色へと色づいた鯨歯特有の風合いは、現代の私たちが眺めても思わず目を奪われるほどの魅力を持っています。
4.ヒゲの特性を活かした職人技。ザトウクジラをモチーフにした「印籠」

実用品を多く手がけてきた佐世保市の小柳佐喜男氏の作品と考えられる、ザトウクジラをモチーフにした「印籠(いんろう)」は、クジラの異なる部位の特性を巧みに組み合わせた傑作です。本体の黒い部分にイワシクジラのヒゲ、内側の縞目部分にナガスクジラのヒゲ、根付にシロナガスクジラのヒゲやマッコウクジラの歯が使われた、職人技が光る逸品です。
5. 江戸時代の粋を手のひらに。紅葉流水図が彩る小さな「姫印籠」

江戸時代に作られた「姫印籠(ひめいんろう)」は、鯨歯の大きさに合わせて極小サイズに仕立てられており、表面には「紅葉流水図」の金蒔絵が施された風情ある作品です。
姫印籠とは、主に女性向けに作られた小ぶりな印籠のことで、親指と人差し指でひょいと掴めるほどの小ささが特徴です。極小の鯨歯と美しい蒔絵が織りなす精巧な共演は、現代の私たちが眺めても思わず目を瞠るほどの日本の粋な職人技が凝縮されています。
まとめ:秋の夜長に、時代を超えて受け継がれる職人技を振り返る
重陽の節句や秋の行事にゆかりのある、クジラのヒゲや歯を使った伝統工芸品の数々は、現代のファッションに取り入れても美しく映える魅力を秘めています。日本のものづくりの歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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