天井をクジラが泳ぐ!?「神奈川県立生命の星・地球博物館」で楽しむ大迫力の骨格展示とクジラ講座 | 耳ヨリくじら情報 | くじらタウン

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2026.09.23

天井をクジラが泳ぐ!?「神奈川県立生命の星・地球博物館」で楽しむ大迫力の骨格展示とクジラ講座

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神奈川県小田原市にある「神奈川県立生命の星・地球博物館」では、天井から吊るされた大迫力のクジラの全身骨格展示や、実物標本に触れて学べる教育・普及活動が行われています。
今回は、同館の学芸員であり鯨類学・形態学を専門とされる西村双葉さんへの取材をもとに、常設展示室におけるクジラ標本の役割や見どころ、そして10月に開催される「クジラ講座」の魅力について深く掘り下げてご紹介します。

「生命の星・地球」常設展示テーマが語る哺乳類の多様性

神奈川県立生命の星・地球博物館の常設展示は「生命の星・地球」という大きなテーマのもと、地球の長い歴史と、様々な環境に生息する多様な生物を凝縮して紹介するストーリーとなっています。館内を入口から進んでいくと、海で生まれた生命が陸上へと進出し、哺乳類が出現・多様化していった進化の道のりを感じられる構成です。

その多様化した哺乳類のなかから、展示室の「生命を考える」エリア内にある「再び海へ」のコーナーでは、陸上生活を経て「再び海での暮らしを選んだ哺乳類」としてクジラたちの骨格標本が展示されています。ここでは鯨類の他にも鰭脚類(アシカ・アザラシ・セイウチの仲間)や海牛類(ジュゴン・マナティーの仲間)の標本も並びます。海で暮らす哺乳類の中でも、水中で生活するための体のかたち、生き残るための戦略はそれぞれ異なります。同館ではこの展示を通じて、海で暮らす哺乳類がいることや、さらに多様な体のかたちや戦略があるというおもしろさを、来館者の皆様に発見してほしいという狙いを持っています。

インカクジラの化石標本

この豊富なコレクションのなかでも、「コククジラ」と「イッカク」の全身骨格は全国的にも常設展示が珍しく、特にコククジラは1990年に地元の小田原市に漂着した個体の実物骨格です。また、インカクジラの化石標本は、新種記載の研究に利用された標本の一つである「パラタイプ」(※)であり、ほぼ全身が揃っているという点からも極めて重要な標本として展示室で大きな存在感を放っています。

※パラタイプ・・・新種を発表する際、その学名の最上位の代表基準として指定される単一の標本を「ホロタイプ(正基準標本)」と呼びます。これに対し、その論文の中で生物の個体差や形・大きさの変異幅を示すために一緒に引用された、ホロタイプ以外の基準標本シリーズのことを「パラタイプ」と呼びます。(高知大学 標本類総合データベース「タイプ標本について」より参照)
本種のホロタイプは蒲郡市生命(いのち)の海科学館に展示されています。

まるで海中を泳ぐ姿。天井に吊るされた巨大なクジラたち

展示室を見上げると広がるクジラたちのダイナミックな空中展示は、天井から吊るすことで、まるでクジラが海中を優雅に泳いでいるかのような姿を目指して設計されました。これらの標本は、1階で下から見上げてその圧倒的な大きさを肌で観察できるだけでなく、3階の展示室からは横から同じ目線で、3頭が並んで泳ぐ美しい構図を楽しめる立体的な工夫が施されています。

開館当時の資料によると、非常に重量のある大型鯨類の骨格は、展示室内に大きな足場を組んで最終の組み上げ作業を行ってから天井に吊り上げられました。館内にある他の吊り下げ標本と被って隠れてしまわないよう、それぞれの高さや位置、角度が細かく調整されています。

常設展示されている現生鯨類の全身骨格5点を観察する際、西村さんは「比べるからこそ見える種ごとの特徴にぜひ注目していただきたいです」と語ります。これら5種は、体の大きさや体長に対する頭の割合だけでなく、特に「歯の有無や形」に種の特徴がよく現れています。全く歯を持たないコククジラに対し、それ以外の4種には歯があり、さらにその4種の間でも、歯の数や大きさ、生えている場所などに細かな違いを見ることができます。

地球の記憶を未来へ遺す。博物館の役割とストランディング調査

同館では、刻一刻と変化する地球環境や生物について調査研究を進めるとともに、それらを記録や標本として未来に残していくための活動を行っています。そうした「今しかできない記録の収集」として重要な役割を果たしているのが、神奈川県の海岸にストランディング(座礁や漂着)したイルカやクジラの調査です。

この活動について、西村さんは以下のように語ってくださいました。

「ストランディング個体の調査は、場所や時を選ばないため苦労も多いですが、1例1例の積み重ねが鯨類の生態や彼らがおかれている現状を知るための重要な手がかりになると考えています。神奈川県では、博物館や水族館、大学が連携して漂着鯨類の対応を行っており、各機関やボランティアさんの協力があってこその調査といえます。今後も、『今』しかできない調査の機会を最大限に生かした調査を続け、皆様にも研究成果を分かりやすくお伝えできるようにしたいと考えています。」

このように現在の海を見つめ、貴重なデータを未来へ遺し続けている同館ですが、神奈川の海とクジラとの関わりは、決して現代に始まったことではありません。館内の展示や研究からは、神奈川とクジラとの歴史を示す、非常に興味深い事実が明らかになっています。

県内の縄文時代の貝塚からはまとまった数の鯨骨が出土しており、この時代から鯨類が積極的に利用されていたことが示唆されています。現在の漂着調査から遥か昔の貝塚の発見にいたるまで、博物館の活動は海の生き物たちの貴重な記録を未来へと繋いでいます。

10月11日(日)開催!実際の骨に触れて不思議を発見する2つのクジラ講座

日常から少し遠い存在に感じられがちなクジラですが、実際には日本周辺の海にも多くの鯨類が生息・来遊しています。同館の展示や普及活動には、クジラを少しでも身近に感じ、その魅力を知っていただくきっかけにしてほしいという想いが込められています。

この秋、10月11日(日)には、それぞれ異なる対象に向けて、テーマを同じくする2つの講座が開催されます。午前中に開催される講座「クジラ・イルカの体のかたちを知ろう」は、小さなお子様やご家族向けに、体のかたちの不思議を楽しく分かりやすく紹介する内容です。そして午後に開催される「クジラ・イルカの形態学 鯨類の”かたち”に注目」では、種ごとに異なる様々な特徴や、独特な形態をじっくり感じる内容となっています。

実際の骨格標本を間近で観察したり、実際に触ったりする体験を通して、参加者自身が鯨類のかたちの特徴や面白さを発見できる貴重な時間を経験することができます。昨年度の参加者からも、「実際の骨格を触ったり、間近で観察したりすることができて楽しめた」「クジラに興味が持てた」という反響が寄せられています。

※細かな注意事項については、ホームページ内の講座ページにある「講座・観察会の申し込み方法」に記載されています。詳しくはそちらをご覧ください。

見れば見るほど面白い、クジラたちの世界へ

大迫力の空中吊り下げ展示や貴重な標本、そして体験型の講座など、神奈川県立生命の星・地球博物館にはクジラの奥深さに触れられる素晴らしい環境が整っています。

取材の最後に、西村さんから読者の皆様へ向けて、以下のような温かいメッセージをいただきました。

「鯨類は見れば見るほど、知れば知るほどに面白い生物だと思います。既にクジラが好きな方も、ほとんどクジラのことを知らないけれど興味をもったという方も、それぞれの楽しみ方で展示を見たり講座に参加したりしていただけたら嬉しいです。」

ぜひこの秋、神奈川県立生命の星・地球博物館へ足を運び、本物のクジラたちの持つ魅力と、地球が紡いできた壮大な記憶を体感してみてはいかがでしょうか。

【施設・クジラ講座情報】
▼ 博物館の基本情報
施設名:神奈川県立生命の星・地球博物館
住所:〒250-0031 神奈川県小田原市入生田499

▼ 10月11日(日)開催
1.講座「クジラ・イルカの体のかたちを知ろう
・開催時間:10:00~12:00
・対象:小学4年生~6年生とその保護者
・申込締切日:2026年9月29日(火)

2.講座 「クジラ・イルカの形態学 鯨類の”かたち”に注目
・開催時間:13:30~16:00
・対象:高校生~成人
・申込締切日:2026年9月29日(火)

※詳しい応募方法や注意事項については、神奈川県立生命の星・地球博物館 各種イベント一覧より該当ページをご確認ください。

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