千葉市科学館の大人が楽しむ科学教室でクジラの授業を開催!「君はどちらを選ぶか?~クジラが歩んだ二つの道~」 | 耳ヨリくじら情報 | くじらタウン

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2024.05.15

千葉市科学館の大人が楽しむ科学教室でクジラの授業を開催!「君はどちらを選ぶか?~クジラが歩んだ二つの道~」

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千葉市科学館で週末開催されている「大人が楽しむ科学教室」にて2024年3月30日に加藤秀弘先生(日本鯨類研究所顧問、東京海洋大学名誉教授)による高校生以上を対象としたクジラについての講座が開催されました。講座では加藤先生のクジラの研究をするようになったきっかけやクジラの種類についてクジラがどのように進化していったのかを解説!

アザラシの研究からクジラの研究に

最初は加藤秀弘先生がクジラの研究の道へ進むまでのエピソードです。

北海道大学で学び、自然豊かな学生寮で暮らしているうちに、アザラシに出会い研究を始めました。当時の北海道ではアザラシ漁が行われていて、学生中にアザラシ漁の船で水汲み係として過酷な作業をしながら、研究用にアザラシのサンプルを採取していました。その後、漁場が200海里に制限されるようになりアザラシ漁ができなくなったため、トドの研究をはじめました。アザラシと違い大きくて重たいトドは扱いが大変でこのまま研究を続けるのは厳しいと思っていた矢先に、東京の旧鯨類研究所(水産庁東洋水産研究所/現・日本鯨類研究所)の所長から「東京にこないか?」とスカウトがあり、そのまま旧鯨類研究所で働くこととなりクジラの研究を始めたとのこと。現在もシロナガスクジラ等の大型鯨類の資源生態を専門として、環境変動に伴う鯨類の生態様式の変動と個体群調節機能の解明に取り組んでいます。

クジラの進化について

次にお待ちかねのクジラについてのお話です。
まずはクジラの進化についてどのような祖先をもち、進化していったのかを解説。
皆さんも思ったことがあるかもしれませんが、海にいる哺乳類のアザラシ、ジュゴンはクジラと形は似ています。ただ系統で分けるとアザラシは食肉類(犬など)、ジュゴンは海牛類(近いものだと長鼻類のゾウなど)、クジラは鯨類(近いものだと偶蹄類カバなど)であり、クジラはアザラシやジュゴンとは全く異なる系統なのです。

最初にクジラの祖先といわれていたのが狼のような「メソニック」という動物でした。しかし、研究を重ねるとカバの祖先になる「アントラコテリウム」とされることがわかりました。のちに最初の鯨類とされる「パキケタス」が登場します。徐々に進化してしっぽが尾ビレとなり足が退化していきます。写真(上)の赤丸のついた部分が「ムカシクジラ」と呼ばれるクジラ類の祖先とされる大昔のグループの1つです。分岐するところからクジラヒゲのあるヒゲクジラと歯のあるハクジラに分かれました。

もともと4足歩行だったクジラの後足は進化につれてなくなりましたが、今でも骨として残っています。今でも胎児の段階では後足にあたる2つのでっぱりがありますが、2週間ほどでなくなってしまう為、生まれる時にはでっぱりはなくなってしまいます。以前、学者たちも驚くようなイルカが和歌山県の太地町で見つかりました。後ろ足のついたイルカが見つかったのです。今回の講座ではその時の実際に足のついたイルカの画像を見ることができました。進化の過程を垣間見ることができるイルカの画像にとても興味深いですね。

クジラの鼻の孔の位置も進化の指標です。進化につれて頭のてっぺんに移動しました。普通の哺乳類は顔の真ん中あたりにある鼻ですが、クジラの鼻は頭の上にあります。なぜかというと人間が水中でシュノーケリングを使って呼吸するように、クジラは鼻を頭の上に移動することで呼吸しやすく進化したからです
鯨類の祖先パキケタスのさらに祖先の話から足のついたイルカの話など、少し難しいけど知らなかったクジラの情報に参加された方は驚きながら聞き入っている様子でした。

「環境調和型」のクジラと「開拓型」のクジラ

口の中にクジラヒゲを持つ「ヒゲクジラ」は地球の環境に寄り添うように進化をしたクジラです。海の生態系の構造を利用して豊富に存在する餌に的を絞り食べています。夏季にはエサが豊富な高緯度海域(※)へ行き、冬季には温暖な海域へ移り出産をして子育てをするなど、地球の四季に応じて回遊します。このようにヒゲクジラ類は地球環境に適してきた「環境調和型」といえます。

※高緯度海域・・・北半球にすんでいるクジラはより北へ、南半球にすんでいるクジラはより南に移動する

一方、マッコウクジラやシャチやツチクジラが属する歯を持つ「ハクジラ」はマイペースに回遊して、それぞれの嗜好に合った餌を食べ、社会的集団の中で生活します。キラーホエールとも呼ばれるシャチにはオス同士が背ビレの高さで個体の総合力を決めると言われています。背ビレが大きいオスのシャチが強いとされ喧嘩せずに勝負をします。
そんなシャチに対して、マッコウクジラはメスと子供の繁殖集団とオス集団と単独のオスに分かれます。オス同士で争い勝った一頭のみが単独行動して繁殖の機会を得ることができ、強い遺伝子を継承していきます。そのため強い遺伝子が残るマッコウクジラは環境変動にも強いと言われています。このようにハクジラ類は陸上で生活していた名残を残し自分の生き方にあう環境を探し続けて自然淘汰(しぜんとうた)をへて強い遺伝子を継承する「開拓型」になったといえるのではないでしょうか。

加藤先生はこの2種類の「環境調和型」と「開拓型」のクジラについて解説した後に「さて、人間はどちらを選ぶのか」という課題を参加者に投げかけて今回の授業は終了となりました。

今回の講座はクジラの生態や進化について深く知ることができ、クジラについてだけでなく環境について考えることが多い今の世の中で「人間」の生き方についても考えてさせられてしまうような、少し難しいけれど内容の濃い聞き入ってしまう講座となりました。参加された方もクジラの生き方について帰り道に考えてしまったのではないでしょうか!?

千葉市科学館では「大人が楽しむ科学教室」を年間約40回開催しています。興味のある教室が開催される際はぜひ参加してみてくださいね。なかなかコアな内容が楽しめる教室となりそうです。

同館は普段何気なく見過ごしている現象を科学と結びつけて、科学の楽しさや自然の不思議に触れられる、子どもから大人まで楽しめる参加体験型科学館です。
館内は3つのフロアに分かれ、視覚や音などを科学的に探究できる「ワンダータウン」、くらしを支える技術を知ることができる「テクノタウン」、宇宙と地球や自然や生命の不思議を体験できる「ジオタウン」があります。月の重力の体感できたり潜水艇の操縦席乗れたりとワクワクしてしまう展示がたくさんあります。他にもプラネタリウムでは、星空の他にデジタル映像の投影もされていて、一日中楽しむことができる場所となっているので、是非遊びに行ってみてくださいね!

▶施設概要
千葉市科学館
住所:千葉県千葉市中央区中央4丁目5番1号
複合施設「Qiball(きぼーる)」内7階から10階
開館時間:
 展示エリア 9:00~19:00
 プラネタリウム 9:00~20:00
休館日:HPよりご確認下さい   
大人が楽しむ科学教室

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