古くからクジラとの関係が深い石川県・能登町の高校生らが、町を活気づけるために考案した「くじらクリームソーダ」が大反響 | 耳ヨリくじら情報 | くじらタウン

耳ヨリくじら情報

2023.03.15

古くからクジラとの関係が深い石川県・能登町の高校生らが、町を活気づけるために考案した「くじらクリームソーダ」が大反響

Share :

『DOYA COFFEE』スタッフさんと参加メンバー:(左奥から順に)阿部美羽さん、瀬戸梨愛さん、府中琴音さん、坪口奈央さん、(左手前から順に)山下椋子さん、野村萌花さん(以上、能登高校地域産業科3年生)

2022年12月、石川県立能登高等学校の地域産業科の3年生 6人 (2023年3月卒業)が考案した「くじらクリームソーダ」が、能登町宇出津のコーヒー店『DOYA COFFEE』で販売されたことが、ニュースとなって全国に配信されました。なぜ注目度が高かったのか、そしてなぜクジラをモチーフとしていたかというと、石川県能登町はかねてより「クジラの町」として知られているから。昔からクジラが漂着することが多く、クジラにまつわる伝説もさまざまに存在する能登町の生徒たちは、プロジェクトを通して、クジラについてどんなことを学び、どんなことを日本全国の人に、そして後世に伝えていきたいと考えたのでしょうか?「地域の学校を地域で盛り立て地域の未来を創造する」をコンセプトとする、「能登高校魅力化プロジェクト」のコーディネーターを務める木村聡さんおよび生徒6人にお話を伺います。

――くじらクリームソーダは見た目にも可愛らしく、たくさんのお客さんに喜んでいただけたようですが、そもそもなぜくじらクリームソーダを考案するに至ったのでしょうか?
阿部:私たち地域産業科の生徒は、能登の産業の六次化を題材として課題研究に取り組んだのですが、そのなかで、能登では古くからクジラが食べられていて、それは全国的にも珍しいことなのだと知りました。だけど、それまでの私たちがそうだったように、地元の人たちの多くは、クジラが食べられるのが珍しいことだとは知りません。そこで、地元のみなさんにも、能登町とクジラとの縁の深さに目を向けるきっかけを提供できたらと考えて、地元のカフェとコラボすることを考えました。

――みなさんは子どものころからクジラをよく食べていたのですか?
野村:家ですき焼きを食べることはよくあります。私は好きですが、好き嫌いに関しては好みが分かれるかもしれないけど、食べたことがある人は多いと思います。
府中:私も好きですよ!
阿部:メニューとしては、刺身とか竜田揚げとかで食べることが多いです。でも、調べてみたところ、同じ石川県でも金沢のほうだとあまり食べられていないみたいで、それについても初めて知ったのでびっくりでした。
野村:これまで、新鮮なクジラの刺身を食べられることは当たり前のことだったので、課題を通して、それが当り前じゃないことを知れたのも大きなメリットでした。

――能登でクジラが捕れるのですか?
阿部:クジラを捕る目的で漁をおこなっているわけではないのですが、定置網に掛かってしまうことがあるらしく、そうすると漁網を傷つけてしまうので、水産庁に届出をして許可をもらったうえで、ありがたく命をいただいているそうです。でもそれに関しても、地元の人もほとんど知らないようでした。
木村:私は東京から能登町に移住してまもなく5年経つのですが、移住した当時はスーパーで普通にクジラの刺身が売られていることに驚きました。しかも新鮮だからすごくおいしいし、ドリップが出ても血生臭さがまったく感じられないんです。能登町ってすごく広くて、東京でたとえると山手線の内側くらいの広さがあって、海に面したエリアもあれば山に囲まれたエリアもあるので、鯨食の知識に関しても住んでいる場所によって差が大きいんですよ。だから、生徒たちも授業を通して初めて知ることが多く、「多くの町民にもクジラのことを知ってほしい!」と思ったのでしょうね。

▲情報発信班で文章とデザインを考えて作成したポスター

――今回の課題研究を通して、クジラについてどのようなことを学びましたか?瀬戸:私はみんなと違って能登出身ではなく、ソフトテニスをするために能登高校に入学したので、そもそもこの地域ではクジラが食べられているということ自体知りませんでした。課題研究を通していろんなことを学んだのですが、なかでも興味深かったことは、能登町にはクジラにまつわる伝説がいろいろ残っていることです。特に、江戸時代の昔、不景気だった集落が、クジラが一頭捕れたことによってうるおったという話は印象的でした。
坪口:縄文時代の人たちが既に捕鯨していたということにもびっくりしました。あと、能登とは直接関係ないのですが、国によって捕鯨に対する考え方がまるで違うことも初めて知りました。捕鯨をテーマとするフォーラムの開催が重ねられても、意見がひとつにまとまることはないそうですが、それもしょうがないことなのかなと思いました。

▲バタフライピーのグラデーションとしっぽ型クラッカーのトッピングがかわいい
「くじらクリームソーダ」

――くじらクリームソーダのこだわりポイントを教えてください。
阿部:クジラが泳いでいる海を表現したかったので、色にはこだわりました。でも、試作段階ではバタフライピーの風味が強すぎることが気になったので、能登町特産品のブルーベリーのお酢やバニラアイスを足すことで味を調整していきました。クジラのしっぽは、クッキーにするとアイスにのせたときにふやけてしまうので、クッキーではなくクラッカーにすることで食感をキープしました。

――くじらクリームソーダを考案するうえで地元の方々に話を聞いたり、もしくは販売時にお客さんとクジラについて話したりとコミュニケーションについて考えることはありましたか?
府中:商品開発班と情報発信班に分かれて準備を進めたのですが、特に情報発信班は、地元のみなさんにクジラのことや私たちの活動のことを知ってもらえるよう、コラボイベントを告知するポスターを作ったりインスタアカウントを作って情報発信したりしていたので、「どうすれば伝わりやすいだろう?」ということについてはすごく考えました。
――クジラについて、能登町について、伝えたいことがたくさんあったのですね!

(提供:数馬雄晴)

野村:能登の魅力をたくさんの人に知ってもらうために課題研究で活動していたグループは他にも複数あるんです。能登は海もキレイだし祭りも楽しいし、魅力がいっぱいの地域なので、全国の人にも注目してもらえたらうれしいです。

(提供:数馬雄晴)

瀬戸:実は能登は“イルカの町”としても知られているんですよ。海に姿を現すことが多いので、食としてのクジラだけじゃなく、生き物としての鯨類に興味がある人にもぜひ遊びに来てほしいです。
山下:海もいいけど山もいいですよ。私のうちの目の前にも田んぼが広がっていますが、そこで採れるお米もおいしいし、本当に自慢の町だと思っています。
坪口:今以上にたくさんの人が来て、にぎやかな町 になっていってくれたら私たちもうれしいです。
課題研究を終えた6人はこの3月で同校を卒業しましたが、「能登高校魅力化プロジェクト」は今後も継続されます。彼女たちが立ち上げたInstagramも後輩に引き継いでいくことを願っているとのことなので、これからもどんな情報が発信されるのかをどうぞお楽しみに。

能登高校魅力化プロジェクト
能登町の行政や能登高校、各種地域団体、地域住民有志などによる「能登高校を応援する会」を2009年に発足し、町が一体となって能登高校を盛り立てていくとともに、地域の未来を担う人材育成に取り組むプロジェクト

Share :