長崎「くじら工芸」マッコウクジラを使った貴重な工芸品製作の舞台裏 | 耳ヨリくじら情報 | くじらタウン

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2022.11.16

長崎「くじら工芸」マッコウクジラを使った貴重な工芸品製作の舞台裏

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創業者:村野七郎氏

長崎県にある「くじら工芸」は今も昔も変わることなく、店内のアトリエにて職人さんが手作業で工芸品を生み出す歴史ある工房です。クジラの歯や骨を使って商品を製作し、販売・メンテナンスサービスまで行っています。店舗や商品の詳細はこちらからチェックしてみてくださいね! 今回は、そんな古くから愛されるくじら工芸の内部にスポットを当ててご紹介していきます♪

“クジラ工芸品”の先駆者「くじら工芸」のなりたち

くじら工芸はもともと1967年に「海洋工芸社」という名で先代の村野七郎さんが創業した会社です。それから5年後に天然の純粋椿油を髪や身体、全身に使えるオイルの製造販売事業を展開する「五島椿本舗」を立ち上げました。2020年に海洋工芸社と五島椿本舗は合併し、名前は「海洋工芸社」から「くじら工芸」に代わりました。
村野さんは15年間、捕鯨母船で船舶の修繕や部品修理をするストーキー(船匠)として乗船していました。その後、「クジラの歯を細工してたくさんの人に広めたい」という想いから長崎で会社を立ち上げ、当時は工芸品を広めるためにデパートに出店していました。しかしクジラを扱う商品は前例がなく、白い目でみられ苦労の日々だったようです。それでも出店を続けることで、少しずつクジラの魅力が伝わり現在に至りました。

職人技でうまれる貴重なマッコウクジラの工芸品

今回、実際に製作の様子を見せてくれたのは彫り師のOさん。写真の通り、小さい鯨歯を削りながらかたどっていく大変細かい作業です。削り始めると粉がふわふわ舞い独特な香りがしてきます。少しのズレが完成度に大きく影響するとても小さいサイズのため、見ているだけでも緊張感が伝わってきます。

同店で手掛けているのはマッコウクジラのみですが、マッコウクジラは現在ワシントン条約で捕鯨を規制されているため新たに手に入れることはできません。そのため製作に使われるマッコウクジラはすべて条約の規制前に調達した分で賄っているとのこと。さらに、彫り師はOさんを含め2名で製作をしているそうです。原材料の在庫面・職人技の継承面からも、貴重な工芸品であることがわかりますね。

実は“奥深い”クジラ工芸品の魅力

みなさんは昔、「鯨一つ捕れば七浦潤う」と言われていたのをご存知でしょうか?
クジラを一頭捕ると大きな利益をもたらすとされ、その多大な感謝を込めて身体の五臓六腑を余すことなく、肉はもちろん、皮や骨など様々な部位を活用してきました。そんな生活を潤してくれるクジラは“縁起物”としても知られています。クジラはその身体の大きさから、「志を大きく」「心を大きく」という願いを込められ、長崎では現在もお正月や年越しの際に、縁起物としてクジラ料理が並びます。
彫り師のOさんは、そんなクジラの魅力について「クジラは長寿の生きもので、歯も強いので、アクセサリーなどとして身に着けることで、身を守ることにもつながるのではないでしょうか。クジラは海の中を母子で行動するので家族円満にもゆかりがありますよね」と語っていました。

アクセサリーはデザイン性ももちろん重要ですが、そういった背景を知ることで、身に着ける際により愛着が湧いてきますね!プレゼントの際には、そんな“願い”を込めて贈るとさらに相手に喜ばれそうですね。

長崎の特産品である“クジラ”で喜んでほしい

先代の娘である現社長の村野眞理子さんに、クジラ工芸に対してどんな想いで取り組まれているのか伺いました。
「全国の百貨店での“長崎展”に出店をしてきました。日本経済の高成長と共に、私たちも良い波に乗ってきました。工房の職人達は増え、15人程度で様々な機械や道具を使い、装飾品をつくりました。その後、クジラの工芸品は時代の流れにより販売量が低迷してきたため、椿油の販売に力をいれました。椿油の絞りカスに鯨歯粉を入れた椿油と鯨歯のコラボ商品「一番搾め 椿油粕(天然有機肥料)」は当店の注目商品です。‘クジラのアクセサリーや椿油は女性を輝かせるものだから、長崎の特産品として発展させたい’ と創業当時から今まで思っております。鯨歯の確保についてはワシントン条約で様々な捕鯨が禁止になる中、全私財を投じてマッコウクジラの歯を調達してきました。今のところ原料の不安はなく、現在当店での生産力を保ちながら地元や観光客の方に、長崎の特産品として喜んでもらいたいと全国各地で展示販売を続けております」

同店で製作された工芸品は、クジラ歯の特徴により、1つ1つ色味が異なるため、実物を直接見るのとパソコンやスマホの画面上で見るのとでは印象が異なります。ぜひ実物を直接見てお気に入りの一品と出会ってくださいね♪
長崎県物産振興協会のECサイトには少しだけ掲載しているとのことなので気になる方はこちらからチェックしてみてください!

さらに、本店工房の店内は至る所にクジラが点在していて、クジラに囲まれる楽しいお店です!

ぜひ一度、訪れてみてはいかがでしょうか?

■くじら工芸 本店工房
住所:長崎県長崎市本尾町1-20
電話番号:095-845-5110
FAX:095-845-2119
営業時間:9:00ー 16:30
定休日:土曜、日曜、祝日

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