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2019.09.17#歴史

くじらと人のつながり

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日本人はいつから鯨をたべてきたのか?

日本は海に囲まれた島国です。日本人は、海の幸を重要な食料源として古来から利用してきました。日本近海は鯨の回遊路にあたり、約40種類ほどの鯨類が生息しています。そのため、なんらかの理由で海岸に流れ着く寄り鯨(ストランディング)も少なくありません。そうした鯨は昔から海からの恵みとしてありがたく利用されてきました。近代になってからも、日本各地でこのような寄り鯨の収益で建てられた小学校があり、現在でも残っています。

古代の人々は捕獲が比較的容易であった、寄り鯨の利用に始まり、やがて意図的な捕獲であるイルカ漁や捕鯨へと移行していったようです。多くの研究者たちは、貝塚などの痕跡から、日本では縄文時代早期(約9,000~6,000年前)には鯨類が食され、おそくとも縄文時代前-中期(約6,000~4,000年前)からは積極的な捕獲であるイルカ漁もおこなわれていたと考えています。

弥生時代以降になると、イルカだけでなくより大きなくじらも狙った捕鯨も行われていたようで、長崎県壱岐市の原の辻遺跡(紀元1世紀ごろ)からは「日本最古の捕鯨線刻画土器」が出土し、くじらの骨で作られたアワビオコシや骨剣などもこの遺跡から出土しています。さらに、壱岐市にある同時代のカラカミ遺跡からも鯨骨でつくられた農具が出土し、捕鯨の痕跡がうかがえます。また、壱岐市の鬼屋窪古墳(7世紀)の石室の2箇所にも「捕鯨図」と思われる線刻画が刻まれています。

飛鳥時代には、仏教の影響からか天武天皇が肉食禁止令(675年)を発布しました。その後もたびたび肉食禁止令が出され、日本では肉食が禁じられていきますが、当時、鯨は魚とみなされていたため、このような禁止令の対象となることはありませんでした。鯨は歌にも表れ、奈良時代に編纂された万葉集(759年)では、海などの枕詞「鯨魚とり(いさなとり)」として詠まれています。また、平安時代の文書にも、久治良の記載があり、鯨はオス、鯢はメスと区別していたことが記されています。室町時代には、鯨は鯛や鯉に匹敵する高級魚とされ、その大きさやめずらしさから、時の権力者への饗応料理として用いられたことが文献に残っています。

高級食材であった鯨ですが、江戸時代中期には庶民の食べ物となりました。古式捕鯨と呼ばれる捕鯨業が日本全国で急速に発達し、鯨の供給量が急増したことがその背景にあります。和歌山県の太地で慶長11年(1606)に「鯨組」が創設され、日本で最初の組織的突き捕り式捕鯨がはじまりました。そして、延宝3年(1675)には、より効率的な網掛け突き捕り式捕鯨へと進化しました。これらの捕鯨方法はすぐに全国へと伝わり、各地で捕鯨業が盛え、19世紀全般にはその隆盛を極めました。鯨組は当時最大級の産業であり、「鯨一頭で七浦うるおう」といわれたゆえんです。

当時は生肉類の保存の技術がなかったため、日持ちのしない内臓類は産地で消費されることが多く、赤肉や皮類は塩蔵品として、天下の台所であった大阪へと集積され、その後全国の消費地へと運ばれました。現在でも九州では「ゆでもの」といわれる内臓類の料理が有名です。また、関西でも「はりはりなべ」やコロといった鯨の食文化がより強く残り、鯨の需要は関東よりも西で高い傾向にあります。また、保存が利いた塩蔵皮類は、日本各地で流通しました。江戸城下でも、遠い産地から運ばれた鯨皮が12月13日に行われた「すす払い」のあとに鯨汁として食べられていました。当時、どじょう料理屋で鯨汁がメニューとして登場し、その伝統は今日まで引き継がれています。江戸っ子は鯨好きだったようで、「魚偏に江の字でくじらと書かせたい」という川柳も残っています。塩皮は、海から遠く離れた山間部でも食べられるようになり、各地で貴重な動物性脂質として正月、祭りなどハレの日に食べられており、その一部が現在でも郷土食として残っています。

鯨と祭り

日本人にとって鯨は大切な生き物と考えられていたからこそ、鯨に関わる祭事が古くから各地で行われていました。およそ5000年前のイルカの骨を並べた縄文時代の祭事跡(石川県の真脇遺跡から出土)が有名ですが、現在も、鯨に関わる伝統的な祭が、全国に残っており、また近年新たに始められた鯨や捕鯨にちなむ祭も数々あります。

全国の鯨に関わる主な祭

◆北海道
・室蘭市
 室蘭八幡宮 神楽 鯨神の舞

◆宮城県
・石巻市
 牡鹿鯨まつり 古式捕鯨再現

◆千葉県
・鋸南町
 浮島神社祭礼 鯨唄

◆東京都
・昭島市
 昭島市民くじら祭り

◆静岡県
・沼津市
 諸口神社祭礼 鯨突き踊り、鯨突き唄
 【動画】http://www.youtube.com/watch?v=mH9rotPS6sA&feature=mfu_in_order&list=UL

◆三重県
・四日市市富田
 鳥出神社祭礼 鯨船神事

・四日市市南納屋町
 諏訪神社祭礼 鯨船神事

・四日市市磯津町
 塩崎神社祭礼 鯨船神事

・四日市市楠町南五味塚
 南御見束神社祭礼 鯨船神事

・鈴鹿市長太旭町
 飯野神社祭礼 鯨船神事
http://mkfilm.photo-web.cc/gallery2.html

・尾鷲市梶賀町
 飛鳥神社 鯨船行事 ハラソ祭り

・鳥羽市相差町
 相差天王くじら祭
http://www.kankomie.or.jp/event/detail_5125.html
http://tobakanko.jp/modules/event/index.php?p=17

・紀北町海山区
 大白神社 大例祭 大白祭り 古式捕鯨再現

◆和歌山県
・新宮市
 三輪崎八幡神社祭礼 鯨踊り
http://www.rurubu.com/event/detail.aspx?ID=13847

・串本町古座
 河内神社 河内祭り 御船の水上渡業

・太地町
 飛鳥神社祭礼宵宮 宵宮頭屋祭り

 飛鳥神社 お弓祭り
http://www.wakayama-jinjacho.or.jp/jdb/sys/user/GetWjtTbl.php?JinjyaNo=8033

 太地浦勇魚祭り 綾踊り 鯨船パレード 鯨太鼓
http://gt.ohrai.jp/detail/30422/5886.html

◆高知県
・室戸市
 浮津神社祭礼 鯨舟唄
http://www.city.muroto.kochi.jp/hopweb/joho/html/joho00000032.htm

 ふるさと室戸祭 鯨船競漕、鯨舟の唄

◆山口県
・長門市
 向岸寺 鯨回向
http://member.hot-cha.tv/~htc09819/ekou.html

 通くじら祭り 海上古式捕鯨再現 鯨唄
http://member.hot-cha.tv/~htc09819/maturi.html

◆長崎県
・上五島町
 メーザイテン(弁天財祭り) 鯨唄
http://www.piconet.co.jp/nippon-net/nippon.cgi/see/12748

・長崎市万屋町
 長崎くんち 鯨汐吹き
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E5%B4%8E%E3%81%8F%E3%82%93%E3%81%A1
 【動画】http://www.youtube.com/watch?v=mOW76aKgBMU

ヒゲクジラの利用図

日本人にとってクジラは”海からの幸”として大切にされ、食用だけでなく、内蔵、皮、尾、骨やひげまで、全てを捨てることなく利用してきました。

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