小笠原諸島に漂着したクジラの骨を発掘!クジラが漂着してから骨格標本になるまで | 耳ヨリくじら情報 | くじらタウン

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2026.01.07

小笠原諸島に漂着したクジラの骨を発掘!クジラが漂着してから骨格標本になるまで

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2025年5月、小笠原諸島・兄島にマッコウクジラが漂着しました。

この出来事をきっかけに、小笠原ホエールウォッチング協会による調査が始まり、漂着個体の調査や骨の回収、骨格標本の作製へと取り組みが進められていきました。そしてその過程では、島民も参加する「骨格発掘体験イベント」が開催されました。

今回は、マッコウクジラの漂着から発掘イベントに至るまでの経緯をご紹介します。

漂着をきっかけに始まったマッコウクジラ調査

提供:小笠原ホエールウォッチング協会

5月8日、「兄島にマッコウクジラが打ち上がっている」という情報が島民から協会に寄せられました。
 漂着鯨類のサンプリングには行政機関の許可が必要であることから、連絡を受けた協会では、関係機関への申請や調整を進めました。その翌9日、調査チームが現地へ向かい、本格的な調査が開始されました。

提供:小笠原ホエールウォッチング協会

現場では、遠くからでもマッコウクジラ特有の四角い頭部を確認できたそうです。個体は腹部付近で二つに分かれており、全長の正確な計測はできなかったものの、体長はおよそ10mと推定されました。島の海岸に横たわるその姿は、あらためてマッコウクジラの大きさを実感させるものだったといいます。

腐敗は進行していましたが、体の各部から必要なサンプルを採取できる状態でした。胃や腸の内容物からはイカのくちばしが見つかり、餌不足による死亡の可能性は低いと考えられています。歯のすり減り具合や体の大きさなどから、高齢のメスであったと推察されました。

海へ沈んだ骨と、困難を極めた回収作業

提供:小笠原ホエールウォッチング協会

漂着直後はまだ多くの肉が残っていたため、すぐに骨を回収するのではなく、骨が露出するまで現場の状況を見守る判断が取られました。
しかし時間の経過とともに、波の影響で骨の多くは海中へと沈んでいきました。最も重い頭骨だけが、しばらく磯の上に残っていたそうです。

提供:小笠原ホエールウォッチング協会
提供:小笠原ホエールウォッチング協会

その後、頭骨も海に沈んだとの情報を受け、現場での回収作業が行われました。海底では、頭骨や脊椎骨が確認され、下顎骨や肋骨など比較的軽い骨は素潜りで回収されています。一方で、100kgを超えると推定される頭骨は非常に重く、簡単には持ち上げられませんでした。

提供:小笠原ホエールウォッチング協会

救命浮環で浮力を確保し、ロープで引き寄せるなど試行錯誤を重ね、水の力を借りながら少しずつ船へ引き上げたといいます。限られた装備の中で行われた作業からは、現場対応の大変さが伝わってきます。

なぜ「埋めてから掘り出す」のか

提供:小笠原ホエールウォッチング協会

回収された骨には、まだ脂や小さな肉片が付着していました。
そこで今回は、一度地中に埋め、バクテリアの働きによって自然に分解を進める方法が選ばれました。 大型鯨類の骨格標本づくりでは、年単位で埋設する例もありますが、今回の個体はすでに海水に浸かっていたことである程度肉が落ちていたこと、脂を抜きすぎると骨がもろくなる恐れがあることなどを考慮し、埋設期間はおよそ3か月と判断されました。夏場で気温が高かったことも、この判断に影響しています。

提供:小笠原ホエールウォッチング協会

重機の使用が難しい離島である小笠原では、埋設も掘り起こしもスコップを使った手作業で行われました。時間と手間のかかる作業ですが、島の環境に合わせた方法で進められています。

島民参加で行われた骨格発掘体験イベント

提供:小笠原ホエールウォッチング協会

掘り起こしのタイミングに合わせ、東京都公園協会との共催で「マッコウクジラ骨格発掘体験イベント」が開催されました。
当日は約70名が参加し、子どもから大人まで多くの島民が集まりました。

提供:小笠原ホエールウォッチング協会

イベントではまず、研究員から小笠原近海に生息するマッコウクジラの繁殖・育児群や、これまでのストランディング調査について説明が行われました。その後、参加者が実際にスコップを手に取り、土の中から骨を掘り出す体験が始まりました。

提供:小笠原ホエールウォッチング協会

骨が姿を現すたびに歓声が上がり、1m以上ある上あごの骨の重さに驚く子どもたちの様子も見られました。大人からも「これはどこの骨ですか」「この穴にはどんな役割があるのですか」といった質問が次々と寄せられたそうです。子どもから大人まで、マッコウクジラの骨格に興味津々な様子がうかがえますね。

骨格標本の完成と今後の展望

掘り出された骨は洗浄を終え、現在は乾燥作業が進められています。今後は薬品による補強や破損部分の修復を経て、展示可能な骨格標本へと仕上げていく方針です。なお、発掘から公開までには、およそ2〜3か月を要する見込みとなっています。

完成した骨格標本については、まず小笠原ビジターセンターでの展示が計画されています。ちなみに、大型鯨類のストランディング調査が実施されたのは、1989年の小笠原ホエールウォッチング協会設立以来、今回が初めてのケースだそうです。
サンプリングから作製、設置に至るまで、現在は手探りで作業が進められています。しかし、今回得られた骨格は極めて貴重な資料であることは間違いありません。研究や教育の現場で広く活用できるよう、今後はさまざまな可能性が検討される予定です。

こうした取り組みは、学術的な価値にとどまらず、島の人々がクジラをより身近に感じるきっかけにもなりそうですね。

提供:小笠原ホエールウォッチング協会

また、小笠原では2〜3月がホエールウォッチングのベストシーズン!
ザトウクジラを中心としたクジラたちを船や陸上から目撃しやすい時期です。
今回マッコウクジラのストランディング調査を実施した「小笠原ホエールウォッチング協会」でもホエールウォッチングのツアーを紹介しているので、気になった方はこちら から見てみてくださいね。

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■小笠原ホエールウォッチング協会
住所: 〒100-2101 東京都小笠原村父島字東町 商工観光会館(B-しっぷ)内
電話番号: 04998-2-3215
営業時間:8:00~12:00、13:30~17:00
定休日:土曜、日曜

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