【2025年版】秋に読みたい、鯨の本特集 | 耳ヨリくじら情報 | くじらタウン

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2025.09.24

【2025年版】秋に読みたい、鯨の本特集

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秋風が心地よい季節になりました。読書の秋、食欲の秋です。今回は、日本の文化と深く結びついている”鯨”をテーマにした3冊の本をご紹介します。それぞれ異なる視点から鯨の魅力に迫ります。

1. 北海道の沿岸で捕鯨船を操業する人々の物語『鯨と生きる 北海道偏』

最初にご紹介するのは、北海道の捕鯨文化をテーマにしたノンフィクション『鯨と生きる 北海道編』です。著者は、沖縄県石垣島在住の写真家・西野嘉憲(にしのよしのり)さん。北海道の沿岸で捕鯨船を操業する人々の日常を、丹念な取材と美しい写真で描き出しています。

現代の商業捕鯨に携わる人々の生き様を記しています。漁師たちが厳しい自然と向き合い、鯨を追い求める姿、そして彼らの生活を支える家族の姿が、胸を打つ言葉で綴られています。単なる捕鯨の記録ではなく、人と鯨、そして海との深い関係性を描いたまるで人間ドラマのような一冊です。
食卓に並ぶ鯨肉が、どのような人々の手によって、どのような思いで届けられているのか。その背景にある物語を知ることで、私たちは食に対する感謝の気持ちを改めて感じることができるでしょう。

書名:鯨と生きる 北海道偏
著者:西野嘉憲
発行:立夏書房
発行日:2025年7月

2. 鯨を味わい尽くす『鯨肉料理』

次にご紹介するのは、『鯨肉料理』です。鯨肉の魅力を余すことなく伝える、まさに「鯨肉のバイブル」と言える一冊です。

この本は、単なるレシピ集ではありません。今まで明かされなかった「鯨肉科学」の全貌が深く語られ、各部位の特徴を俯瞰的に解説している一冊です。
鯨肉を食品科学、調理科学的な視点から理解することで、どのように調理すれば美味しさと正しく向き合えるのかを示しています。牛肉でも豚肉でもない、鯨肉だからこそ引き出せる味わいを実現する技が記されています。
赤身肉、うねす、皮、尾羽毛、舌肉、コロに至るまで、鯨をまるごといただける約40点の料理レシピを収録。著者が得意とする食品科学の視点で、鯨肉に最適な調理法や味付け、副材料や薬味などの組み合わせが提案されています。

また、日本各地で受け継がれてきた郷土料理も紹介されており、日本食文化としての鯨肉料理を学ぶこともできます。食に携わる方々にぜひ読んでいただきたい必携の書です。

書名:鯨肉料理
著者:松本青山
発行:農山漁村文化協会
発行日:2025年7月3日

3. 捕鯨の歴史を巡る旅『真潮の河』

最後にご紹介するのは、現在の千葉県鋸南町を舞台にした壮大な物語『真潮の河』です。著者は、鯨食文化や歴史を研究している夢酔藤山(むすいとうざん)さん。歴史的な事実に基づきながらも、臨場感あふれる物語が展開されます。
捕鯨が盛んだった時代の漁師たちの情熱、厳しい環境下で働く彼らを支える家族の姿、そして鯨に対する畏敬の念が生き生きと描かれています。

戸湾で組織捕鯨を興した初代醍醐新兵衛が目指した捕鯨のあり方は、現代の捕鯨をめぐる複雑な議論に、新たな視点やヒントを与えてくれるかもしれません。

2025年10月11日(土)22時よりこちらの本を朗読劇で楽しめる配信イベントが開催されます。詳しくはポスターにてご確認下さい。

書名:真潮の河
著者:夢酔藤山
発行:つむぎ書房
発行日:2025年8月

今回ご紹介した3冊は、それぞれ異なる切り口で鯨と鯨に関わる人間という存在に光を当てています。『鯨と生きる 北海道』は、現代の捕鯨に携わる人々の営みを通して鯨と人との関係を描き、『鯨肉料理』は、食材としての鯨肉の魅力を教えてくれます。そして『真潮の河』は、日本の捕鯨の奥深い歴史について、物語を通して学ぶことができます。

読書の秋、食欲の秋に、これらの本を手に取ってみてくださいね。きっと、食卓に並ぶ鯨肉や、海を泳ぐクジラに対する見方が変わるはずです。

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