長崎市の繁華街のひとつ、思案橋。その電停の近くに、ひときわ大きく「くじら」と書かれた垂れ幕が目を引きます。

暖簾をくぐると、地元の常連客で賑わいをみせる暖かい雰囲気の小料理屋。川村さんご夫婦で営まれている同店は、おつまみの定番メニューである串揚げやだし巻き卵などを楽しめますが、長崎の食文化であるクジラ料理も食べることができます。

長崎のご当地グルメといえば、カステラやちゃんぽんをイメージしますが、実は鯨肉もそのひとつ。長崎県では江戸時代より古式捕鯨の盛んな地域で、クジラを使った食や文化が今もなお根付いています。そんなクジラの町で新鮮な鯨肉を食べたいと思ったら、やはりお刺身が気になりますよね。同店のクジラの刺し盛りは種類豊富で様々な部位を楽しめるのが嬉しいポイント♪

お酒のアテにもピッタリな小料理屋の鯨肉

こちらの盛り合わせは、14種類の部位があり、定番の赤身やベーコンのほかクジラの食道や歯茎、胃袋などあまり聞き馴染みのないユニークな鯨肉が並びます。大将のおすすめである、ポン酢を付けていただきますが、あっさりした味わいの中にも鯨肉をしっかり感じることができます。さらに赤身刺しには、背中の皮の脂が添えられています。一緒に口に運ぶと、さっぱりとした赤身ととろみのある脂身がお互いを引き立て合い、味わいを増します。クジラ一頭の身体でも部位により全て食感が異なるので、ひとつひとつ楽しみながら食事ができますね。

さらにこちらの小鉢は左から、「湯かけクジラのスジポン」「おばいけの白味噌」「松浦漬け」。鯨肉は度々、“クセ”があるという話しを耳にしますが、どれも臭みがないことに驚かされます。特に「おばいけの白味噌」は、みずみずしくさっぱりとした尾羽と濃厚な白味噌が絶妙にマッチングしてお酒のアテにぴったりな一品。お酒もお箸もどんどん進むこと間違いありません。

〆にもピッタリ！優しく身体に染み込む‘‘生うね’‘が入った地獄煮そうめん

そして、地元民からも人気の高い同店の名物料理は「クジラの畝須」と「島原そうめん」が融合した至極の一杯である「地獄煮そうめん」。そうめんを使ったクジラ料理とはなかなかユニークですが、一体どのようなものなのでしょうか。

今回は特別に、大将に作り方をお聞きしました！まずは、クジラのスジポン・本皮と共に、白菜・椎茸といたってシンプルな具材が入ります。

続いて出汁をとったスープに、野菜、椎茸、クジラの順に具材を投入し、そうめんはゆがかずそのまま鍋に入れます。硬いまま入れることが“地獄煮”の特徴だとか。

「味噌汁にもこうやって麺をそのまま入れるとひとつのおかずになったりしてね。昔はそういうのをよくやっていたよ」と大将は教えてくれました。
最後に水菜を上にのせて完成です。

どんぶりに入って出てきたのは、ほのかに出汁の香る温かいそうめん。口に運ぶと、細麺に、クジラがよく絡んで、初めてながらどこか懐かしさを感じるような味わい。やがて、じんわりと優しい旨味が身体中に染み込んでいき全身が癒されます。出汁にクジラの風味を感じることができますが、クセがなくサラサラ食べることができ、最後の一滴まで飲み干したくなります。

大将に「地獄煮そうめん」が誕生したきっかけを伺うと、「仕入先でお世話になっている日野商店の会長さんが昔、五島の有川で五島うどんを食べたのを思い出して、教えてもらったんだ。でもうどんとなると一度湯がかないといけないからそうめんでするようになった。長崎は島原そうめんが有名だからそれでやってみたんだ」と語っていました。さらに、コロナウイルスが流行る前は、お店を深夜3時まで営業していたそうで、その時間ともなると思案橋の街には、ちゃんぽんをおくラーメン店はあちこちで開いているものの、飲み会の帰りの地元客からは優しい味を求めて来店してくる人が多くいたそうです。たしかに、お酒の〆や仕事後の疲れた身体にほしくなる一品でした。

長崎の味覚と暖かい雰囲気を堪能することができる空間

美味しいお酒と共に、つまみから〆まで楽しむなら「かわむら」がおすすめ！また、今回紹介したメニューのほかに「クジラカツ」も常連客からの人気が高いとか。遠方にお住まいの方もぜひチェックしてみてくださいね。店頭の大きな「くじら」の垂れ幕が目印です♪

かわむら
住所： 〒850-0901 長崎県長崎市本石灰町1-3
電話番号：095-821-9100
営業時間：17:30～22:00
定休日：日曜
※ご来店の際には営業時間など最新の情報をご確認ください。