女子栄養大学短期大学部にて 作って、食べて、学ぶ「くじらの調理実習セミナー」を開催 | くじらの栄養・調理情報局レポート | 知る・学ぶ | くじらタウン

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女子栄養大学短期大学部にて 作って、食べて、学ぶ「くじらの調理実習セミナー」を開催

女子栄養大学短期大学部にて、クジラを調理して、食べて、学ぶセミナーが開催されました。参加したのは在籍する学生たちで、セミナー参加と調理実習の体験をしました。

はじめにクジラの生態や資源について研究を行う日本鯨類研究所・久場朋子さんより、クジラの研究成果やクジラとヒトとの関わりについて説明。

▲日本鯨類研究所 久場朋子さん

「クジラは、およそ85種類いて、日本近海には約40種類います。体長が4m以下のものをイルカと分類していますが、同じ鯨類です。私たちとクジラの関わりは、縄文時代から始まります。真脇遺跡から大量のイルカの骨が発見され、ヒトがクジラやイルカを食べていたことが分かりました。200年前には網捕式捕鯨が行われ、クジラは一頭捕れれば7村が潤うといわれるほど、貴重な食材だったようです。江戸時代には『鯨肉調味方』というクジラの料理方法が書かれた本が出版され、部位ごとの料理法が載っていて、あらゆる部位を食べていたことが分かります。クジラは高たんぱく・低カロリーでヘルシーな食材です。最近では、新しい栄養素の働きもわかってきて、注目度も高いです。日本でも新たな捕鯨が解禁され、今後、身近な食材として食べられる日も近いと思います」

続いて、女子栄養大学食品生産科学研究室・准教授 西塔正孝先生より、クジラの栄養面について説明がありました。

「クジラは捨てるところがないといわれるほど、すべてを活用することができます。その中で一番多く食べられいるのが赤肉で、背肉やお腹の後ろ辺りの部分です。ミンククジラの赤肉を一例にすると、エネルギー100gあたり106キロカロリーと、とても少ないエネルギー量です。たんぱく質量は24.1%とほかの肉より多くなっていて、脂質は0.4%と低く、ヘルシーな食材であることが分かります。鉄やビタミンB12、ナイアシンも多いので、貧血や肌荒れを気にされる方には良い食材ですね。今回紹介したいのが、畝須というクジラのお腹の前辺りの皮付き肉です。エネルギー量は高くなりますが、コラーゲンやビタミンAが多く含まれていたり、血液の流れを良くする効果があるEPA、DHAの数値も高いのが特徴です。もうひとつ特徴的なのが、クジラに多く含まれるバレニンにはイミダゾールペプチドのひとつで、運動機能向上や抗疲労作用、抗酸化作用が明らかになりつつあり、ほかの肉や魚にはほとんど含まれていない機能成分がクジラ肉には含まれていることが分かってきたのです。今日はその栄養豊富なクジラ肉を使い、作って、食べて、学んでみてください」

▲女子栄養大学食品生産科学研究室准教授 西塔正孝先生

学生たちも鯨について、栄養面についても理解をしたところで、次は、調理実践。

今回挑戦したメニューは「くじらの竜田揚げ」「くじら肉の麻婆豆腐」「くじら汁」の3品で、実習レシピを担当したのは、女子栄養大学食物栄養学科の豊満美峰子先生と児玉ひろみ先生。

▲(左から順に)くじら汁・くじら肉の麻婆豆腐・くじらの竜田揚げ

クジラの赤肉を調理する場合、短時間加熱するのがおいしくいただくコツなので、短時間で揚げる、煮る、焼く、炒めるのがおすすめとのこと。

実習生たちは、初めて扱うクジラ肉に興味津々の様子でした。実際に肉に触れて、調理し、食べることでクジラ肉に対しての理解が深まったようです。

セミナーに参加した学生たちは「栄養面がとても良いので、高齢の方にも料理を工夫することで食べやすくなると感じた」と話しており、さらに調理したクジラメニューを試食した感想としては「香味野菜と良く合っており、くさみもなくおいしく食べられた」「ごはんとの相性バッチリ」「麻婆豆腐よりもボリュームがあった」などがあり、クジラの栄養や調理についての知識を得ることが、満足度の高い結果となりました。

■ そのほかのアンケート回答
「スーパーで見かけたら買いたい」
「レバーよりも食べやすかった」
「油を使った料理によく合うと感じた」
「鯨肉は硬いイメージだったけど、下処理をすることで軟らかくなることが分かった」

セミナーに参加したことで学生さんたちもクジラへの理解が深まったようです。今後、様々な形でクジラの魅力を発信していってくれるといいですね。

【くじら肉の麻婆豆腐】

■材料<6人前>
・くじら肉赤身 250g
・生姜汁   小さじ2杯
・酒     大さじ1杯
・片栗粉   大さじ2杯

・木綿豆腐  2丁(600g)
・ネギ    1と1/2本(150g)
・生姜  1と1/2かけ(30g)
・サラダ油  大さじ3杯

・甜面醤   大さじ3杯
・豆板醬   小さじ1杯
・信州味噌  大さじ3と1/2杯
・水     1カップ(200g)
・醬油    大さじ1杯
・酒     大さじ3杯

・水     大さじ2と1/2杯
・片栗粉   大さじ1/3杯

・ごま油   大さじ1杯

■作り方
①くじら肉は1㎝角に切り、下味をつけ1時間以上置いておく。
②ネギと生姜はみじん切りにする。
③木綿豆腐は1㎝角に切り、2分程茹でる。
④漬け置いておいたくじら肉は、水気をよく切り、片栗粉をまぶして160℃で揚げる。
⑤ネギ・生姜を炒め、合わせ調味料を入れたら、揚げたくじら肉と豆腐を入れ炒める。
⑥水溶き片栗粉を加え、最後にごま油を入れて完成。

【くじらの竜田揚げ】

■材料<6人前>
・くじら肉赤身   240g
・醬油      大さじ1/2杯
・酒       大さじ1/2杯
・生姜汁     小さじ2杯
・おろしタマネギ  20g

・片栗粉      適量

・醬油(たれ)    小さじ2杯
・砂糖 (たれ)    小さじ1/3杯
・みりん (たれ)   大さじ1杯
・酒 (たれ)     小さじ2杯

・黒ごま      少々

■作り方
①くじら肉を5㎜程度の厚さに切る。
②くじら肉を醬油・酒・生姜汁・おろしタマネギ・おろしリンゴを合わせたものに15分程度着けて置く。
③②の肉の汁気を軽く切って、片栗粉をまぶす。
④160℃の油で1分30秒程度揚げる。
⑤たれの材料を鍋に入れて弱火で加熱し、揚げたくじらを加えてからめ、黒ごまを散らして完成。

レシピ考案:女子栄養大学調理学研究室/教授 豊満美峰子・専任講師 児玉ひろみ

女子栄養大学出版部