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2020.11.25

「難しいことは考えず、おいしくクジラを食べてほしい」【木村優哉さんinterview後編】

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「木の屋石巻水産」三代目社長として鯨肉の魅力を広め続けている木村優哉さん。インタビュー前半では、「家庭では男性にこそクジラ料理を作ってほしい」との名言を発信してくれましたが、後半では、クジラの魅力や、クジラを食べたことがない人に食べてもらうために工夫していることについて教えてもらいました。

▲美里町工場 外観

クジラは全国的には珍しい食材だからこそ、「食べてみたい」と思ってもらいやすい

――木村さんが考える“クジラの魅力”を教えてください。

「石巻では普通に食べられているクジラですが、全国的に見ると珍味みたいな位置づけかなと思うんです。でもね、珍味って可能性があると思うんですよ。珍しい食材だからこそ、知らない人からすると『食べてみたい』っていうものなんじゃないかなって。それに、栄養価が高いのも大きな魅力。健康志向の人にはもってこいだし、自信をもって『身体にもいいしおいしい食材ですよ』って言えます」

地元・石巻では、地方に住む子どもや孫のために鯨肉を購入していく人も多い

――ヘルシーな食材として次世代にも受け継いでいきたいですよね。

「本当にそう思います。通常より安く販売する直売会のときなんかは、10個くらいまとめて買っていかれるお客さまも多いんですけど、話を聴くと『東京の息子に送ってあげるんだ』って人もいて。そういうふうに、お子さんやお孫さんにも伝えていってほしいですよね」

油ものがたくさんは食べられなくなる30代以降の世代にはぴったりな食材

――木の屋さんでも、若い人に向けてクジラの魅力を発信し続けていますよね。

「はい。うちの会社でもSNSなどを通していろんな取り組みはしているんですけど、正直なところ、10代20代にはあまり響かないです。若いときって、安い肉でもいいから量を食べたいですよね。そうなると、鶏や豚に比べて値段が高いクジラには関心が向きにくいと思うんです。でも、30代に突入すると、だんだん『量より質』になってくるし、『脂が乗ったカルビは3枚で十分だな』ってなりますよね? 僕自身、今36歳なんですけど、年々好みが変わってきているんですよ。だから、クジラって30代後半からの世代にちょうどいいんじゃないかなあ。若い人には、『赤身のほうがおいしいって感じるようになったらクジラはどう?』って伝えるくらいがいいのかもしれません」

▲ 木の屋石巻水産 代表取締役/木村 優哉 さん

――確かに、食べ盛りの食欲を満たすというより、ヘルシーで身体にいいという要素が大きいですね。

「そうなんです。でも、これまでクジラを食べたことがない人にも手を取ってもらえるよう、商品の開発には力をいれています。最近でいうと、くじらのコロッケの販売を始めたんですけど、これも、『クジラを食べる一歩目の商品になればいいな』と思って考案したものです。鯨肉の含有量は少なめだけど、ご当地性もあるから興味を持ってもらえるかなと思っています。ほかには、鶏や豚も混ぜて肉団子を作ったりもしています」

昔ながらの鯨の大和煮は、60代以上のファン多数

――売れ筋はどんな商品ですか?

「やっぱり鯨肉の大和煮缶詰が一番ですね。購買層としては60代以上が多いです。30代半ばのお父さんお母さんがお子さん連れでいらっしゃることもあるけど、親の世代から受け継がれているんでしょうね。缶詰もそれ以外の商品も、極力余計な味付けはせずに国産の原料で作っているので、安心して召し上がっていただけると思っています」

▲鯨肉詰めの様子

地元の酒造とコラボして、クジラと相性のいいお酒を開発したことも

――木の屋石巻水産ホームページでは、鯨肉を使ったレシピも紹介していらっしゃいますね。

「そうですね。おもしろいなと思うことは全部やってみるようにしています。地元のお酒屋さんとのコラボした鯨缶専用日本酒『コレ、ス鯨(すげい)』(石川酒造)も販売しているんですけど、これは、大和煮との相性を考えて開発されたんですよ。缶詰が甘いんで、辛口でスッキリした味わいです」

パッケージにも工夫を凝らして、若い人にも食べてもらえる機会を増やしていきたい

――2011年の東日本大震災からの復興に際しては、東京・経堂の居酒屋『さばのゆ』をはじめ全国の方々が応援してくれたとのことですが、それによって仕事への向き合い方などに変化はありましたか?

「いろんなジャンルの方とのご縁をいただき、たとえばパッケージひとつとってもたくさんの参考意見をいただけたことで、『伝え方』が変わってきました。『さばのゆ』を筆頭に、うちのクジラ加工商品を使ってくださっている飲食店の方々が熱心に発信してくださったおかげで、若い人からもおいしいと言ってもらえる機会も増えました。クジラを食べたことがない人は、『筋が多いんでしょ?』『クセがあるんでしょ?』といいますけど、実際に食べるとみんな『おいしい』って言ってくれる。だから、みなさんからいただいたアイディアも摂り入れながら、若い方にも食べてもらえる機会を増やせたらいいなと思っています」

家庭に並ぶ魚だって、クジラと同じように資源管理しながら獲っている

――商業捕鯨再開をきっかけに、改めてクジラや捕鯨について考える機会がみんな増えているかと思いますが、さまざまな意見があるなか、木村さんが改めて、クジラや捕鯨についてみなさんに伝えたいこと、知ってほしいことはありますか?

「一言でいうと、『難しくしなければいいのに』って思います。資源管理のために捕獲していい数を決めることは、家庭に並ぶ様々な魚種でもやっているのに、なぜかクジラだけ問題になりやすい。一般の消費者さんにとっては『おいしくいただくこと』がすべてなんだから、わたしたちは『食べてもらえる努力』を続けるので、それに十分足るだけの量を供給してほしいです。きちんと資源管理すればクジラは絶対にいなくならない。安心して食べてほしいので、木の屋ではこれからも、クジラのおいしさを伝え続けていきたいと思っています」

▶木村優哉さんの Intervew 前編
「家族で食べるクジラ料理は、ぜひ男性に担当してほしい」

▲ 木の屋石巻水産 代表取締役 木村優哉 さん

■ 木村優哉 さん
木の屋石巻水産 代表取締役
1984年生まれ。宮城県石巻市出身。 クジラ、サバ、イワシなどの缶詰や加工品を製造する 1957年創業水産加工品メーカーの総務兼製造責任者を勤める。東日本大震災の津波被害を乗り越え再建を果たし、本社工場、見学可能工場、直売所を構える。

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