聞く
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現在は愛媛県を拠点に自身の作品制作のほか、企業からの依頼によるチョークアートボード制作、体験会やオンラインでのレッスン指導。さらには保育士・幼稚園教諭の資格を持ち、子どもたちが自己表現できる場として子ども教室を開催するなど幅広い活動を続けているチョークアーティストの由井恵さん。
そんな由井さんの作品には魅力的なクジラたちが自由に泳いでいます。
今回は活動や作品、クジラへの想いなどについてお話を伺いました。
きっかけはとあるお客様の声
ーーー初めて描いた作品や、その看板の枠を超えて
「アートとして本格的なお仕事にしたい」と一歩を踏み出した決定的な瞬間はなんですか?
「私は高知県から愛媛県へ引っ越し、知らない土地で初めて働いたのが飲食店でした。そこでメニュー黒板を担当することとなり、記念すべき初黒板はドルチェ(デザート)黒板でした」

「それまで【人に見てもらうために描く絵】という経験はありませんでしたが、その後も定期的に描き替えをしていく中である日、お客様から『この黒板を見るためにお店に来ています』と声をかけていただいたことがありました。自分が描いた絵で誰かが喜んでくださる。その瞬間、本当に胸がいっぱいになりました。当時、まだ友達もいなかった地で、私にとって『アート』という存在は、自分と人をつないでくれる架け橋になったと感じています。退職した後も、この出来事がずっとこころに残っており、”絵を仕事にしてまた誰かに喜んでほしい”そんな思いから、チョークアートの道へ進み始めました。」

パートナーのような存在
ーーー由井さんの作品には魅力的な『クジラ』が登場しますがクジラと出会ったきっかけや思い出はありますか?
「私にとって『クジラ』という存在は、現実の生き物としてももちろん魅力的ですが、それ以上に自分の制作感覚と深く重なる存在です。作品を制作するとき、キャンバスや素材を前にすると、しばらく時間が止まったようになることがあります。目の前の素材をじっと見つめていると、頭で考えるというより、自分の内側へ潜っていくような感覚になり、そこから少しずつイメージが湧き上がってきます。」

一部のクジラは深海まで潜ることができます。海面にも居られるけれど、もっと深い場所へも潜っていける。その姿が、私が制作をするときの感覚ととても似ていると感じました。また、クジラは、遠く離れていても仲間同士でコミュニケーションを取ることができ、そんな“つながっている”という性質にもとても惹かれています。私の中で『つながり』という言葉は、とても大切なキーワードです。それは他者とのつながりだけではなく、自分自身とのつながりも含まれています。そんな表現の世界において、クジラは私にとって大切なパートナーのような存在になっています。」
ーーーこれまでに本物のクジラを海でご覧になったことはありますか?
「幼い頃、家族と一緒にホエールウォッチングへ行ったことがあります。ただ、その時の思い出は少し変わっていて(笑)、私は船酔いでずっとうずくまっていた記憶の方が強く残っています。今はSNSなどで海の中を泳ぐクジラの映像を見るのが大好きで、見るたびに、本当に神秘的な生き物だと感じます。私は昔から水の中が好きで、以前ハワイでスキューバダイビングをした際にはホヌ(ウミガメ)と一緒に泳いだことがあるのですが、いつか海の中で、本物のクジラを目の前で見てみたいです。海の中に入ってしまえば、船酔いもしませんので(笑)」

アートは自由
ーーーなぜクジラを描き始めたのですか?
「不思議と惹かれた、というのが一番近いかもしれません。きっかけらしいきっかけは、実はありません。初めてチョークアートでクジラを描いたことがあったのですが、その後も自然と作品の中にクジラが登場するようになりました。これほど長く同じモチーフを描き続けたことは今までなかったので、自分でも不思議に感じています。でも、この『不思議と惹かれた』『理由は説明できない』という感覚にこそ、大きな意味があるような気がしています。そして、クジラの生態や仲間とのつながりを知るほどに、その魅力にますます惹かれるようになりました。」
ーーー作品を制作するうえでのこだわりや想いがあれば教えてください。
「作品を制作するうえで大切にしていることは、【現実をそのまま描かないこと】です。アートは自由だからこそ、どんな世界を表現してもいい。そんな思いが根底にあります。だから私の作品では、クジラは海だけではなく、宇宙を泳いでいたり、木の上に乗っていたりします。そんな非現実的な世界を創造することが大好きです。背びれの有無や形なども、作品の世界観によって変わっています。

そんな中で、よく作品をご覧になった方から『クジラの目が優しいですね』と言っていただくことがあります。目の位置や、最後に光を入れる瞬間は特に集中して描いています。描くたびに、『目には命が宿るんだな』と感じる、大切な時間です。また、海外のSNSでは美しいクジラの映像を発信しているアカウントがたくさんあり、制作の参考として見ることがあります。一般的なデザインでよく見る姿だけではなく、水中で見せる何気ない動きや一瞬の表情がとても美しく、その自然な姿から多くのインスピレーションをもらっています。また、自分自身の感情の世界をクジラに重ねて表現することもあれば、作品を見た誰かのこころが少しでもゆるみ、安心できるような存在になればという願いを込めて制作しています。」
ーーー今後、描いてみたいクジラはいますか?
「作品では現実とは違う色や世界観でクジラを描くことが多いため、種類そのものに詳しいわけではありません。ただ最近は、『長いクジラヒゲ』を持つクジラを描いてみたいと思うようになりました。長く美しいクジラヒゲを、私らしい非現実的な世界観の中で表現できたら面白そうだなと感じています。どんな作品になるのか、私自身も今からとても楽しみにしています。みてみたいクジラは、『ホッキョククジラ』です。ネットでみた時、フォルムが好きだなあと感じました。」

ーーー特に『ターニングポイントになった作品』や『一番思い入れのある作品』はありますか?
「私にとってのターニングポイントは、ドーム型のクジラの立体アートです。それまで平面作品が中心でしたが、立体という表現が加わったことで、作品の可能性が大きく広がりました。昔から奥行きのあるものに惹かれる性格なので、自分の作品にもその表現を取り入れられたことがとても嬉しかったです。」
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「また、この作品には、自分自身の内面の変化も映し出しています。その変化は私の人生にも大きな影響を与えた出来事だったため、今でも特別な思い入れがあります。現在も自宅に飾っている、大切な作品です。」
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枠にとらわれない遊び心
ーーー現在、様々な活動を行われていますが、特に「子供教室」ではまた違った驚きや感動があるかと思います。自由にペンやチョークを動かす子どもたちの姿から刺激を受けたり、学んだりしていることはありますか?
「子どもたちの無邪気さや自由な発想には、いつもワクワクさせてもらっています。大人になると、『こうあるべき』『こうしなければ』という考えに縛られてしまうことがありますが、本来の自由な感性を思い出させてくれるのが子どもたちだと感じています。チョークアート教室やワークショップでは下書きは用意しますが、あえて色は指定しません。色を選ぶところから、その人らしい表現が始まると思っているからです。そして一番嬉しいのは、子どもたちが下書きの枠を飛び越えて、新しい世界を描き始める瞬間です。」

「以前、スイカに手足を生やしてくれた子がいたのですが、その自由な発想が本当に面白くて思わず感動しました。そんな枠にとらわれない遊び心は、私自身の作品づくりにも素敵な刺激を与えてくれています。」
アートをもっと身近なものに
ーーー今後取り組みたい活動、目標はありますか?
「今後は、展示会を定期的に開催しながら、多くの方と一緒に、大きなクジラを制作するようなプロジェクトにも挑戦していきたいと考えています。2026年9月には、和歌山県太地町にあるくじら博物館で開催される「くじらまみれ」に出展させていただく予定です。また現在は、小物トレーやマグネットなど、「飾る」だけではなく日常で使えるアートも制作しています。」
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「チョークアートだけではなく、いろいろな画材を取り入れたことで実現した作品も多いです。かけあわせる事が好きなので、これからも楽しみながら、新しい作品をつくっていきたいです。作品の幅を広げながら、人々がアートをもっと身近に感じてもらえるきっかけを増やし、アートを通して、人と人がつながり、自分自身ともつながれる。そんな時間や場所を生み出していくことが、これからの目標です。」
固定概念にとらわれず、自らの世界観で自由にアートを生み出し歩んできた由井恵さんこそまさに広い海を泳ぐクジラのようです。そんな由井恵さんの作品はオンライン販売もしています!2026年9月には、和歌山県太地町にあるくじら博物館で開催される「くじらまみれ」に出展されるので、気になった方はぜひ覗いて足を運んでみてくださいね。

■Leo art Labo(レオアートラボ) チョークアーティスト 由井恵
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