クジラの骨格標本を笹で清める。東京海洋大学『鯨ギャラリー』にて、初の一般参加型すす払いイベント開催 | 耳ヨリくじら情報 | くじらタウン

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2025.12.26

クジラの骨格標本を笹で清める。東京海洋大学『鯨ギャラリー』にて、初の一般参加型すす払いイベント開催

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年末の風物詩といえば大掃除ですが、東京海洋大学のマリンサイエンスミュージアム別館「鯨ギャラリー」では、一味違った大掃除が行われました。
2025年12月23日、鯨ギャラリーに展示されている巨大なクジラの全身骨格標本を清掃する『すす払い』イベントが開催されました。

新年を迎える準備として、1年間に積もった埃を払い落とすこの行事。今回は初めて一般参加者が募集され、普段は立ち入ることのできない”標本の内側”まで掃除した貴重な体験の様子をご紹介します。

マリンサイエンスミュージアムのHPより

「鯨ギャラリー」とは東京海洋大学 品川キャンパス内にある「マリンサイエンスミュージアム」の別館で、世界最大級である17.1mのセミクジラや12.79mのコククジラの全身骨格標本等を展示しています。

清掃作業に先立ち、まずは参加者に向けてマリンサイエンスミュージアムの館長である茂木正人さんによるミニレクチャーが行われました。今回お掃除の対象となる骨格標本がどの種類のクジラであるのか、そしてクジラの骨格にはどのような特徴があるのか等について、専門的に解説されました。

「笹」で、巨大な骨の隅々まで大掃除

会場となった鯨ギャラリーには、圧倒的な存在感を放つクジラの骨格標本が展示されています。この貴重な標本を掃除するために用意されたのは、「笹」です。
なぜ笹を使用するのかというと、雑巾などの布製品を用いると繊維が標本の表面に引っかかり、残ってしまう恐れがあるためです。2024年から導入されたこの「笹での掃除」は、標本を傷めずに埃を落とす、理に適った手法です。

すす払いの様子は、まさに壮観。使用されるのは長い笹です。参加者がこの長い笹を大きく振るうと、標本の最上部、地上からは普段見ることのできない骨の上面にまでしっかりと届きます。標本を傷つけないよう慎重に、かつ丁寧に笹を動かすたび、1年分の埃が静かに舞い落ち、白淡い骨の質感が再び鮮やかに蘇っていきました。

「クジラの内側」から見上げる、クジラの骨格

今回、参加者の皆さんが一番話されていたのは、本来は柵に囲まれ、触れることも立ち入ることも禁じられている「展示の内側」に入ってお掃除ができたことです。

参加者の皆さんは、巨大な肋骨が並ぶドームのような空間に足を踏み入れ、内側から見上げるという視点を体験しました。
参加者Aさん 「普段は規制があって絶対に入れない場所なので、本当に貴重な機会でした。内側から見上げると、まるでクジラに食べられているような不思議な感覚になります。骨がドーム状に重なっている様子がとても綺麗で、魚の骨のようですが、どこか人間にも通じる形をしていて、不思議でした」
参加者Bさん: 「水族館のイルカショーをきっかけにクジラが好きになりました。ここの標本は初めて見ましたが、内側から噴気孔(※)も見つけられてとても楽しかったです」

※噴気孔・・・頭のてっぺんにあるクジラの鼻の穴

五感で知る、標本の不思議

掃除の過程で、参加者は骨に直接触れ、その質感や「匂い」を体感する場面もありました。

驚くべきことに、クジラの骨からは今もなお油が滲み出ており、床に油が垂れている箇所もありました。学芸員の方によれば、「気温の上がる夏場は油がでやすい」とのこと。参加者は「独特な匂いだ」と興味津々な様子。 「臭い」と感じる方もいるとのことですが、その匂いもまた本物だからこその産物ですね。

クジラも心身を整えて、輝く新年へ

長い笹を手に、参加者一人ひとりの手によって丁寧に埃を払われたクジラの骨格標本。清々しい気持ちで新年を迎えられそうですね。巨大なクジラも1年分の汚れを落とし、身軽になって新しい年へ。 皆様もクジラたちに倣って、身の回りをすっきりと整え、晴れやかな気持ちで良い1年をお迎えください。

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