耳ヨリくじら情報
2019年に商業捕鯨が再開され、ミンククジラとニタリクジラとイワシクジラの3種類が対象となっていましたが、今回新たに「ナガスクジラ」も対象追加されることが決まりました。クジラの中で1番大きいシロナガスクジラと名前が似ている「ナガスクジラ」ですがどういった生物なのでしょうか。
今回はそんな「ナガスクジラ」の特徴やシロナガスクジラとの違いについてご紹介していきます。
ナガスクジラの生態
《分類》
ヒゲクジラ/ナガスクジラ科
《名称》
日本名:ナガスクジラ(長須鯨)
英名:Fin whale
学名:Balaenoptera physalus
名前の由来:下あごからおへそにかけてあるシマシマの線〈畝(ウネ)〉が長いことから‘‘長須‘’鯨と呼ばれるようになりました。
《形態》
体長:
〈北半球〉オス18.8m、メス20.0m
〈南半球〉オス20.6m、メス22.2m
重さ:
〈北半球〉オス40.0t、メス43.0t
〈南半球〉オス52.0t、メス59.0t
※ t(トン)… 1t=1000kg
生息域:北太平洋全海域(外洋性)
速度:時速約37㎞
食事:主にオキアミ類などの動物プランクトン、小さな魚やイカ類なども食べる
寿命:最高で84年
《ナガスクジラの特徴》
・クジラの中で2番目に大きい
・ヒゲクジラなので鼻は2つ
・背びれは鎌形で体の前から3分の2の位置にある
・体色が左右非対称で、右側の下あごは白色だが、左側は背中と同じく濃い灰色
・オスのほうがメスよりいくらか小さい
シロナガスクジラの生態
《分類》
ヒゲクジラ/ナガスクジラ科
《名称》
日本名:シロナガスクジラ(白長須鯨)
英名:Blue whale
学名:Balaenoptera musculus
名前の由来:青みがかった灰色の体色に銀白色の斑紋があることから‘‘白‘’長須鯨が名前になりました。
《形態》
体長:
〈北半球〉オス23.2m、メス24.5m
〈南半球〉オス25m、メス26m
重さ:
〈北半球〉オス75.2t、メス88.5t
〈南半球〉オス94.1t、メス105.8t
※ t(トン)… 1t=1000kg
生息域:世界中(外洋性)
速度:時速約37㎞
食事:オキアミ類や小さな甲殻類を食べる
寿命:80年以上生きる
《シロナガスクジラの特徴》
・世界最大の哺乳類
・ヒゲクジラなので鼻は2つ
・大好物のオキアミ類を見つけると、背骨を軸に体をグルグル回転させながら突進する
・1日に3,600㎏のオキアミを食べるといわれている
・オスのほうがメスよりいくらか小さい
ナガスクジラとシロナガスクジラの違い
ナガスクジラとシロナガスクジラは、名前が似ているので間違えられることが多いですが、同じナガスクジラ科でも種類が違います。今回は、実際に研究者が見分けるために見ているポイントを大きく3つに分けてご紹介します。
まずは「大きさ」
体長は世界最大の哺乳類とあるように、シロナガスクジラの方が大きいです。
ナガスクジラは18~22mですが、シロナガスクジラは23~26mもあり大きい個体では33mを超えることも。
次は「体色」
ナガスクジラの体色は左右非対称です。右側の下あごは白色ですが、左側は背中と同じく濃い灰色をしています。シロナガスクジラは左右対称で青みがかった灰色の体色に銀白色の斑紋があります。
判別するときに1番見分けがつきやすいポイントなのだとか。
最後は「背びれ」
ナガスクジラは鎌形の背びれが体の前から3分の2の位置にあります。
シロナガスクジラは体長の大きさの割りにはとても小さく、ナガスクジラよりも体の後方の前から4分の3のところに背びれがついています。また、形は鎌形、丸型、三角形型と3つに分かれ、個体ごとに形や大きさに差があります。
ナガスクジラの資源量について
ナガスクジラは1906年から1975年までの世界的規模の乱獲により、生息数が大幅に減少してしまいました。
しかし2017年から2022年、IWC(国際捕鯨委員会)のガイドラインに基づいて実施された目視調査により、北太平洋全体の生息数は初期頭数から54%以上の5.5万頭程度まで回復していることが明らかになりました。
北太平洋では1976年から商業的な捕獲が行われておらず、2000年以降の目視調査において発見数の増加が確認されてきましたので、日本は商業捕鯨の対象種に追加することを決定しました。捕獲枠は、厳格な資源管理の方法(改訂管理方式:RMP)に沿って算出されました。捕獲できる頭数は、引き続き毎年調査を続けて科学情報を収集したうえで、原則として6年ごとに改訂される予定です。(IUCNやIWCのホームページは1990年代から更新されていなく北太平洋の最新情報が含まれていないため、絶滅危惧種のままとなっています。)
参考文献:
IWCの改訂管理方式(RMP)に沿って算出された北西太平洋ナガスクジラの捕獲可能量について(仮訳)
シロナガスクジラは調査によって頭数が回復してきていることが分かっていますが、まだ捕獲を決定するに値する十分な資源量ではありません。回復を妨げる原因の一つと考えられる海洋汚染、船舶の衝突、地球温暖化などの気候変動の対策をしていくことが大切です。
ナガスクジラについてこちらも参照(日本鯨類研究所Webページより)