「商業捕鯨が盛んになって、クジラがもっと若い子たちも気軽に食べられる食材になってほしい」元メジャーリーガー・福島レッドホープス監督・岩村明憲さんinterview | 聞く | くじらタウン

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2022.07.20

「商業捕鯨が盛んになって、クジラがもっと若い子たちも気軽に食べられる食材になってほしい」元メジャーリーガー・福島レッドホープス監督・岩村明憲さんinterview

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アスリートにとって身体は資本。世界で活躍した選手ともなれば、食事に関するこだわりも相当なものかと予想されます。しかし、ヤクルトスワローズやメジャーリーグでの活躍を経て、福島レッドホープスの監督に就任した岩村明憲さんが食事するうえで一番大切にしているのは、「命に感謝しておいしくいただくこと」。クジラに対しても同じ考えだという岩村さんに、東京・西新橋のクジラ料理店『鯨の胃袋』で、店主自慢のクジラ料理を食べていただくことに。そこで今回は、管理栄養士の新生暁子さんにもご参加いただきつつお話を伺いました。

命をいただく以上、おいしくいただくことが一番大事

――岩村さんはクジラに関してどんなイメージを抱いていますか?

岩村「給食で出ていたから昔から馴染みがあります。でも、反捕鯨団体が活発に活動するようになってからは、日本も捕鯨に対して慎重になっているイメージがあります。日本のように捕鯨文化がある国がある一方、まったくクジラを食べない国や地域もあるから、反対運動が起きやすいんだと思います。僕自身、アメリカに移り住んでみて食文化の違いを実感したことがありますけど、日本人だって海外の人が食べているカンガルーとか鳩とかに拒否反応を示すこともありますよね。生きているときの姿かたちが浮かぶと、思うことがあるというのは理解できますし、だから反対する人も出てくると思うけど、命をいただく以上、おいしくいただくことが一番大事。僕は釣りが大好きなんですけど、魚釣りの原点もやっぱりそこです」

鉄分豊富なクジラはアスリートにぴったりな食

――今日のクジラ料理もぜひ楽しんでいただきたいです。

新生「鯨肉はアスリートにうれしい栄養素も多彩に含有しているんですよ。資質は少なくタンパク質は豊富で、EPA、DHAも摂取できるうえ、抗疲労成分といわれるバレニンが多く含まれていることでも知られています。なかでもアスリートに特におすすめしたいポイントは、鉄分を豊富に含んでいることです。

岩村「そういう情報を現役時代に知ることができていたらなあと思います。今の時代の現役選手って、野球選手というよりアスリートという感じで食に関してもすごく気を遣っているんですけど、僕らのころはせいぜい『プロテインはいつ飲んだら効果的』くらいの情報しかなかったですから。でも、鉄分が多いなら、もともと血の気が多いから乱闘にならないように気をつけなきゃなと思います(笑)」

――本日ご試食いただく一品目は、お刺身の盛り合わせです。赤身、尾の身、ハツ、さえずり、百畳(胃袋)をご用意いただきました。さえずり、百畳は6時間かけて煮込まれているそうです。

岩村「赤身は福島の馬肉に見た目がよく似ています。福島でよく食べるんですよ。でも、色だけ見るともっと血の味が強いのかなと思ったけど、全然臭みもなくてさっぱりしてる! すごくおいしいです」

新生「岩村さん! これ! この尾の身も食べてみてください! これはびっくりです。口のなかですーっと消えていなくなりました!」

岩村「やばこれ! ほんとだ。ほんとに溶けますね。こんなにおいしい部位を食べたら絶対クジラファンが増えますね」

新生「さえずりは牛タンみたいに“タン”っていう感じもしないですね」

岩村「ほぼほぼベーコンですね、これ。うまいです。百畳はモツだし、ハツもまた違った食感が楽しめるのがいいですね」

――続いては竜田揚げをお試しください。

岩村「これはエンドレスで食べちゃいますね。箸が止まらないです。ハイボールがほしいです(笑)」

新生「わかります。ビールのアテに最高ですよね。しかも臭みも全然ない」

岩村「磯っぽいニオイもしないですよね。肉って言われても信じちゃいます」

――続いてステーキです。

岩村「これはもう完全に肉と間違いますね。『鯨の胃袋』じゃなくて『牛の胃袋』っていう店名だったら絶対牛だと思う人が多いと思います。本当にどのメニューもおいしくて、“これが一番好き”って決められないです。竜田揚げはお弁当に入っていてもテンション上がると思うし、本当に15年前に知っておけば頻繁に食べて僕のパフォーマンスも変わっていたと思います!」

現役引退後、ヘルシー志向になった自分にも鯨肉は最適な栄養源

――現在は食事に関して気を付けていることはないのでしょうか?

岩村「引退して4年も経つと、運動量も減ったし、食べたいものを食べていたらそのぶん体重が増えるからだいぶヘルシー志向になりました。だから今の自分にもクジラはうってつけ。同じ100g食べるにしても、牛よりクジラのほうが健康的ですよね。今の若い子たちにもすすめたいけど、独立リーグの子たちにとっては気軽に楽しめる値段じゃないから、商業捕鯨が活性化することで、もっと気軽に食べられる食材になっていったらいいなと思います。たとえば、居酒屋で出てきた刺身の盛り合わせのなかにクジラも入っていたら、食べ比べも楽しめますしね」

福島沖でクジラが捕れたら新しい可能性が広がると思う

――福島でも食べられる店が増えたらいいですね!

岩村「本当にそう思います。僕たちの仕事は、自分たちの活動を通して、たくさんの人に福島の魅力を知ってもらうきっかけを提供することでもありますが、たとえば福島沖でクジラが捕れるようになったら、またひとつ可能性が広がるなと思います。震災直後は、福島の食材に対する風評被害が大きかったこともありましたが、これからも、そうしたイメージ払しょくのためにも、選手たちと一緒に活躍していけたらいいなと思っています」

▶岩村明憲さん
岩村明憲(いわむら あきのり)
ヤクルト時代、主力打者で活躍。07年にMLBレイズに入団、ワールドシリーズを経験。日本代表としてもWBCにて06・09の2連覇に貢献。15年からはBCリーグ・福島にて選手兼任監督として指揮をとっており、球団運営会社の社長にも就任。MLBの解説者としても活躍中。

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